理想の社会

文字数 801文字

 奴隷制を背景に、この国には大規模な農場がいくつもある。
「国王の意思で、みな安くて良いものを供給している。」
 シンが説明をした。
「国王の退位によって、奴隷制度が大きく変わろうとしている。市民の貧困層を奴隷なみにしようとする第一王子派と奴隷を移民という形で市民に準じる地位にしようという第二王子派が争っている。さらに王制そのものの廃止を訴える政権寄りの第3グループもいる。急激な社会変化は混乱を生み、外国の介入の危険がある。私は仲間とともに移民という第二王子の緩やかな奴隷解放政策を支持している。これは私の義母の望んでいた事でもある。」
 シンは政治にうといショウゴにも解るように丁寧に説明した。
「ここは、義母が経営していたプランテーションの1つだ。」
 そういって彼は巨大な農場へショウゴを連れて入っていった。

 働いているのはみな奴隷のようだった。見て回るうちにショウゴは気がついた。会話が多い。日常会話もさることながら、麦や果実など作物の出来栄えや育成に関する意見が労働者の間で飛び交っている。
「かれらは働かされていて楽しいのかい?」
 ショウゴはシンに尋ねた。
「いや、彼らは自分意思で働いている。この農地の実質的所有者は彼ら労働者だ。ここには奴隷はいない。共同で働き、売上が上がれば豊かになる。農場の所有者は、生産管理と財務管理を行う。彼らは農場とは言わず、工場と呼んでいる。労働者の意見を取り入れ環境を改善し、提案を試してみる。ここには彼らのための医者もいるし、結婚も認めている。」

 労務に対し、生活を保障する。一見、奴隷とかわらないが、彼らには達成感がある。できて当たり前ではなく、できなくて当たり前。だから、できたときの喜びがある。
「義母は、あるべき姿はシンボが教えてくれるといっていた。私の何を見てそういったのかはわからいけど。」
 シンはちょっと照れくさそうだった。
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