師匠
文字数 623文字
生まれつき足の悪いンガボは、成人の儀式が終わるとすぐに、呪術師の弟子になるためにでかけた。女たちに交じって畑を手伝う道もあったが、そういう者たちが一人前とは扱われず馬鹿にされる様をずっと見てきた。
森の奥に名の知れた呪術師が住んでいた。変わり者で、どこの集団にも属さず、一人、薬草の研究をしている。彼は、口にできるものは何でもかじってみた。おかげで死にかけたこともあったが、誰よりも薬草の知識は深かった。
「その足は治せないよ。」
彼は、やってきたンガボを一目見るなり言った。
「いえ、弟子にしてほしい。」
「へ、お前さんもかい。これで何十人目かな。」
呪術師は、薬草を調合しながら続けた。
「狩りに出られない自分は呪術師になるしか生きていけない。」
ンガボが必死に訴えた。
「はて、どうかな。とりあえず、疲れただろう。これでも飲んでゆっくりするがいい。」
呪術師は薬草を煎じたお茶をンガボの前に出した。
ンガボはちょっとためらった。初対面のものから出されたものを口にすることは危険だ。
「ふん、馬鹿ではなさそうだな。」
呪術師はそういうと、自分も同じものを口に含んだ。彼がしっかりと飲み込むのを見てから、ンガボは出されたお茶を口にした。
「この仕事は用心深さが必要じゃ。病気のものに迂闊に触れば自分も同じ病にかかる。病を治せなければ恨まれることもある。安易に悪霊のせいにせず、原因をみきわめることこそ最も必要なことだ。」
森の奥に名の知れた呪術師が住んでいた。変わり者で、どこの集団にも属さず、一人、薬草の研究をしている。彼は、口にできるものは何でもかじってみた。おかげで死にかけたこともあったが、誰よりも薬草の知識は深かった。
「その足は治せないよ。」
彼は、やってきたンガボを一目見るなり言った。
「いえ、弟子にしてほしい。」
「へ、お前さんもかい。これで何十人目かな。」
呪術師は、薬草を調合しながら続けた。
「狩りに出られない自分は呪術師になるしか生きていけない。」
ンガボが必死に訴えた。
「はて、どうかな。とりあえず、疲れただろう。これでも飲んでゆっくりするがいい。」
呪術師は薬草を煎じたお茶をンガボの前に出した。
ンガボはちょっとためらった。初対面のものから出されたものを口にすることは危険だ。
「ふん、馬鹿ではなさそうだな。」
呪術師はそういうと、自分も同じものを口に含んだ。彼がしっかりと飲み込むのを見てから、ンガボは出されたお茶を口にした。
「この仕事は用心深さが必要じゃ。病気のものに迂闊に触れば自分も同じ病にかかる。病を治せなければ恨まれることもある。安易に悪霊のせいにせず、原因をみきわめることこそ最も必要なことだ。」