対決

文字数 993文字

 マーラは怯えながら叫んだ。その様子を見て、集まっている皆は笑った。ルパパの足元には、枯れ草が落ちているだけだった。

「さて、呪術師様。どうしてこれに毒虫が入っていると思った?」
 ルパパはマーラに詰め寄る。
「やつの部屋で、見たからじゃよ。」
 うろたえるマーラに
「では、なぜここにくるのに普段は履かない皮の靴を履いているのか説明願えますかな?」
「それは、毒虫がじゃな、そう毒虫がいると聞いたからじゃ。」
 マーラはしてやったりと笑った。
「おーい。誰か毒虫の話を呪術師様にしたか?」
「いや、言われたと通り、長老が大変なので来て下さいとしか告げていません。」
 マーラを迎えにいった若者は答えた。
「表で毒虫の話をしたものは?」
「いません。」

「くっ!」
 マーラは一声発すると、ルパパたちを押しのけ表に出た。
「そこまでだ。」
 ンガボが彼の前に立ちはだかる。長老の家の出口でマーラは足を黒い臭い水の桶につっこんで転んでいた。
「この水の臭いは洗ってもしばらく取れない。これで、どこに隠れてもお前を見つける事ができる。」
 臭い水とは、原油だったのだろう。原油のついた手では毒虫をさわることもできなかった。
「おまえ、その左足は・・・そうか騙したのか。」
 ンガボの足は毛皮のブーツに隠れていたが左右同じ長さだった。
 マーラは隠していた袋から長いものを取り出すと、ンガボに投げつけた。
「シャー!」
 それは不気味な音をたててンガボの左足首に噛み付いた。
「この毒蛇の牙は、毛皮も突き通す。これで、お前も死ぬのだ。」
 ンガボは毒蛇の頭に槍を付きたてた。槍はンガボの足をも貫いた。
「死を前にして気が狂ったか。」
 マーラは、逃げ出す隙をうかがっていた。

 ンガボはゆっくりと左足のブーツを脱いだ。彼の短い足が出た。彼はブーツを持ち上げるとゆっくりと蛇を引き剥がす。ブーツに見えていたのは、彼の義足杖だった。

 マーラは捕らえられた。ンガボは長老の命がつきるまでという約束で看病のために残った。彼は師匠も知らない薬草でも積極的を使った。それは、森の猿たちが具合の悪いときに食べる葉だった。解毒作用に優れていた。立ち上がるだけの筋力は回復することは無かったが、座って話をするまでにはなった。それから二年後に長老は亡くなった。その後、ンガボは師匠の家へと帰っていった。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み