濡れ衣

文字数 655文字

 呪術師は魔法使いではない。派手な演出などの技はあるが、治療とは無関係だ。
「相手に油断をさせる必要がある。準備も必要だ。わしは帰る。代わりに弟子を向かわせよう。見た目に劣るので相手は見下してくるだろう。素性を知られていないので呪術対決に応じるだろう。やつの家の周りで毒虫の死骸を見かけた。気を付けることだ。」

 ダンガは、長老に再び会うと
「わたしには直せない病だ。残念だが、引き取らせていただく。」
 そう伝えて、ンガボの待つ我が家へと戻った。

 数日後、ルパパに連れられてンガボが現れた。
「我らの様子を探っていた。怪しい奴だ。見張りを付けておけ。」
 ルパパは岩屋にンガボを閉じ込めさせた。

「私は旅の呪術師だ。この地に凄腕の呪術師がいると聞いてやってきた。」
 ンガボの話を聞いて、呪術師マーラが会って真偽を確かめることになった。ンガボの持っている大昔から伝わる進歩のない薬草類をみて安心したのか、
「どこかで呪術を学んだんだろうが、大したことはない。わたしが相手をしてやるから、出してやれ。」
 といって、マーラは彼の家の離れにンガボを泊めた。ンガボは杖とほとんどの道具を近くに隠していた。短い左足を使ってヒョコヒョコと歩く彼を見てマーラは侮蔑の笑みを浮かべた。

「我が王は催促されているぞ。」
 マーラは集落を抜け出して、密偵と会っていた。
「意外としぶとくてな。だが、ちょうどいいカモがやってきた。やつが長老の息子に指示されて毒を盛ったことにする。数日後には朗報がもたらされるだろう。」
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