文字数 447文字

 徐々に標高が上がるに連れ、岩と砂の大地は消え草が増えてきた。雨が降り、川が流れ、涼しくなる。ポポは元気になった。
「ポポ、もう少しゆっくり。」
 タボの息が荒い。熱があるようだ。新鮮な薬草を見つけて岩陰で毛皮に包まったまま眠ってしまった。よほど熱が高いのかタボは震えている。

 ポポは昔、母親がしてくれたように意識の朦朧としているタボの毛皮に潜り込むと、やさしく頭を抱きかかえた。筋肉質のネアンデルタールのほうが若干体温が高い。硬直していたタボの体からは力が抜け、それとともに震えも収まっていった。

 タボは熱にうなされながらも幼いころに母に抱かれた夢を見ていた。彼自身、覚えてはいなかったが、それは体に残された記憶だったのだろう。恐れは消え、草原を吹き渡る風のような安らかな気持ちになれた。

 一夜明けると、タボの熱は下がっていた。すぐ隣で眠るポポに初めは驚いたが、すぐに状況を理解した。
「あの人が言たっ通りだ。」
 タボはポポに悟られないようにクロマニヨンの言葉でボソッと言った。
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