改宗

文字数 513文字

 死刑囚の多くが、改宗する。自分の死に何らかの意味が欲しいのだろう。多くの者を手にかけた殺人鬼ならともかく、多くの政治犯には死に値するような犯罪の自覚がない。だが、政府が勧める宗教は彼らにとって都合のよい考え方である。ショウゴのような奴隷は、生まれながらの奴隷として生きることが正しい信仰なのであろうか?

 仏教・イスラム教・キリスト教・・・いくつかの教えを聞いてみた。しかし、どれもなぜ自分達が生まれながらの奴隷であるのか教えてくれるものはなかった。前世の行いによって生まれる人種が決まるのだろうか?親に罪があるのだろうか?彼らの信仰によって、万人が幸せになっているだろうか?同じ宗教でも、なぜ宗派が生まれ、争うのだろうか?

 結局、誰も教えてくれるものはいなかった。生まれながらに罪びとであり、償うためにこの世に産まれた。確かに、自分が奴隷であることには合致するかもしれない。それなら奴隷でない人々はなんなのだ。罪を償った者達ならば、もっと清く生きていてもいいはずだ。ショウゴにとって宗教は現状を受け入れさせるための道具であり、そこにはあきらめと絶望しか見出せなかった。

 答えの出ぬまま、執行の日は近づいていった。
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