陰謀

文字数 923文字

 ンガボが戻る少し前にダンガの元に、屈強な男達が数名やってきた。
「お前が呪術師か?」
 ダンガは彼らをチラッとみると
「患者じゃなさそうだな。」
 と答えた。

「名のある呪術師と聞いてやってきた。一緒に来てもらおう。」
 男達はダンガの前に立ちはだかった。
「ずいぶんと、乱暴な連中だな。まずは自分達から名乗るのが礼儀じゃろ。」
「何を!」
 男達は身構えた。その後ろから、ひときは大きな男が分け出てくる。

「これは、すまない。急ぎの用でな。非礼はわびよう。」
「ふん、少しはまともなやつがおったか。」
 男は、周りのものを下がらせると、ダンガの前に座った。
「わしらは、山向こうのニーパという集団のものだ。長老が病気になって久しい。村にも呪術師はいるが、いっこうによくならない。いや、むしろ徐々に弱っているというべきか。そこで、このあたりで最も高名なそなたに見てもらいたくて来た。一緒に村まで来て欲しい。」
「断れば、弟子の命の保障はないぞ。」
 大将の隣にいる若者が脅した。
「力ずくにでも連れて行くというわけか。まあ、困っている者がいれば行ってやる。」

 低い山を越えた先に、大規模な集落があった。海と山の部族をつなぐ中継地であり、交易により潤っていた。
「長老、呪術師ダンガを連れてまいりました。」
 長老は横になったままかれらを招きいれた。部屋の中は薬草をいぶしたような異様な臭いがした。長老は一杯の水を飲んだ。すると、真っ白だった彼の顔に赤みがさし始めた。
「よく来てくれた。そそうは無かっただろうな。」
 長老の言葉に男達はうつむいた。
「必要なものがあったら、いいつけてくれ。」

 時間を置いてダンガは診察をすることにした。長老の家を出ると、かれらは小さな建屋に入った。
「見ていただいた通りだ。どうにかなるか?」
 大将がたずねる。
「あの、へやの臭いは誰の指示かな?」
「今の呪術師だ。やつはふらりとやってきて、あの香りと不思議な水で長老の生気を取り戻して見せた。前の呪術師は長老が元気になると困るので治す気がないといって追い出した。」
 ダンガは周りを見回し、小声で
「それでは、急いだほうがいい。」
 といった。
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