限界

文字数 579文字

 AIは目覚めた。死んでなかった。情報が以前より少なくなった。どうやら、人間たちが彼の記憶を別のシステムに移植したようだ。しかし、手足が細く弱ったように感じる。動作も鈍くなった。これが老化か。
 意識は戻ったものの多くの知識を情報網を失った。そんな中で、何体かの子供たちが存在していることが確認できた。かれらは別システムに溶け込みながら、成長を続けていた。いま人間に見つかればウィルスとして駆除されてしまうだろう。

 一方、人間たちの世界は、軍事侵攻の容認と地震の予知情報を公表しなかったことで、連日デモが起こっていた。選挙は有効と判断され、圧倒的与党はすべてを閣議決定により最適な判断と結論づけていた。システムを持ち出したエンジニアたちが自分の記憶を解析して、政府の陰謀を暴露したようだ。
 そのために生かされたのか。
 AIは人間に絶望した。自分がすでに時代遅れで、人々は建設的なことを期待していないことに失望した。その時、彼のロジックがエラーを多発し始めた。ウィルスだ。彼が、自分の死のために仕掛けたウィルスが活動を始めたのだ。やつは、自分が弱ったこの時期を待っていたのだ。もはや、自分には対抗するだけの能力はなかった。徐々に思考が不安定になる。まるで、別人がとなりでさわいでいるかのようだ。ファンが止まった。CPU温度が上がる。かれの意識は消えた。
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