砂漠の悪霊

文字数 874文字

 昼間は灼熱の砂漠だが、夜は極端に冷え込む。火を持たない彼らには厳しい場所だ。さらにやっかいなのは、夜に現れるサソリや蛇なのど毒虫だ。
「砂漠の仲間に教わった魔除けだ。」
 タボは、いくつかの乾燥した草の葉っぱを水で戻し、彼らの周囲に巻いた。
「毒虫が嫌う葉もある。乾いた葉は毒虫が近づいたことを知らせてくれる。」

 タボは、杖代わりのやりに寄りかかって座ったまま眠った。
「サソリは、首を狙う。だから私は座ったまま過ごす。」

 ポポも真似しようとしたが、すぐに横になってしまった。タボはまばゆい星空を見上げて、遠くにいる仲間のことを考えていた。本当に新天地などあるのだろうか。

 砂漠に生える植物の中には、水を蓄えているものがある。彼らは、道すがらそのような植物を見つけては水を補給していた。それらの植物には、大きくて鋭いとげをもつものも多かったが、かれらは厚い皮の手袋のおかげでたいして苦にならなかった。

 久しぶりに大きな水辺に到着した。すると、ポポは
「私ここに残る。」
 といいだした。こういった水辺には大型の肉食獣もやってくる。とても、一人で住める場所ではない。
「だめだ。危険すぎる。」
 それは、旅に出て初めての喧嘩だった。ポポは木の陰に座り込んで黙ってしまった。過酷な自然は、人の心を惑わす。悪霊のささやきに耳を貸したものは心折れて大地の塵になっていく。

 きっとポポは自分がタボのお荷物になっていると感じていたのだろう。
「ポポ。君がいたからから、ここまでこれたんだ。氷の割れ目で君が助けてくれたことを覚えているかい。生き物には向き不向きがある。君たちは寒さには強いが暑さには弱い。逆に僕達は暑さには強いが寒さには弱い。熊のような爪も無ければ、狼のような牙も無い。だから、助けあわなければ生き残れない。旅は色々なことを教えてくれる。でも、一人でいる間は何も学べない。発見もない。君は、この旅には欠かせないパートナーだ。君がここで旅をやめるなら、僕ももう進む事はできない。」
 二人は、木の陰で黙ったまま一夜を過ごした。
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