土器、土器、土禁!

文字数 1,119文字

 栄養のある穀物や、根菜類は蒸し焼きだけでは調理ができない。そこで、壊れやすい貝殻などに代わる調理道具として土器が生まれた。貨幣での売買が発展するに従い、土器製造は専門職となっていった。

 質素だが、使いやすい、ムジル氏。
 丈夫な壷を得意とするタコキチ。
 コップなどをつくるバカらやアホやら。
 勢いがある人気のノリダケ。
 土や木材を求め、年寄りたちが山に移り住む。炭はじっちゃん、器はばっちゃん。
 美しい土器をつくる名工たちが登場する。

 初期の王は長老会のリーダーのような存在で、国も自治区の集まりであった。互いに物資を供給したり、援助をしたりしていた。農作業は時間との勝負だ。同じ時期に一斉に耕作が始まる。畑を耕し、種を蒔き、刈り取る。広くなるほど短期間での人手がいる。そのためには、複数の村が協力しあわなければいけない。農家にとってもメリットはある。収穫したものは、個人の資産ではなく、共同のものだ。だから、病気や災害で全滅したところがあっても余裕のあるところが助けられる。
 彼らにとって、不作というのは個人の問題ではなく、不幸な事故のようなものであり、誰がいつなってもおかしくないものだった。

 そんなゆるやかな時代は、情報化と共に終わる。豊かな土地はいつも豊かであり、貧しい土地はいつまでも貧しい。場所そのものに貧富の原因があることがわかると、土地争いが起こる。国は無駄な争いが起こらないようにするための組織へと進化した。
 土地争いは、海でも山でもどこでも起こった。人は世代が代わるにつれ、より豊かさを求めるようになる。富の再配分としての税も生まれた。数年に一度の飢饉のための備蓄も必要になった。余った備蓄で財を築くものも現れた。

 権力や財力による腐敗に対抗するために、宗教による価値観の統一が必要となった。仲間への命の尊さと自己犠牲による協力。このことが宗教集団にとってはもっとも大切な教えである。なかでも仲間という限定されたものへの愛情を強く唱える宗派が、やがて権力と結びつき拡大していく。

「ドイツだ?マイ先生ってのは。」
 街から名工の器を求めて商人がやってくる。
「なにかね。ずいぶんと偉そうだが。余計な土が混じらないように、ここは土足厳禁だよ。」
 老婆が奥から出てくる。
「王子が病気になった。急いで身代わり人形が必要だ。」
 マイ先生の工房では、器以外に精巧な人形が作られており、その名をはせていた。当時子供が病気になると人形に身代わりをさせて治すという風習があった。より人に近いものほど効果があると思われていた。木製ならば燃やし、陶器なら割る事で代わりに死んでくれると信じていたのだ。
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