選択

文字数 803文字

「おぬしは選ぶ道は3つ。」
 ダンガはルパパの目を見て尋ねた。
「1つは、このまま長老の死を待つ。2つ目は、苦しみから解放してやるために死を早める。3つ目は呪術師を代える。」

「わたしも、父も死は恐れてはいない。父が死ねば、私が犯人にされるだろう。奴が別の部族の者に計画を話すところをたまたま友人が聞いていた。その部族は周辺の者たちを支配し、巨大な集団を作ろうとしている。友人は私に伝えた直後姿を消した。」

 呪術によって支配し、巨大な国と呼ばれる集団をつくろうとしている連中がいることはうわさでは聞いたことがあった。かれらは獲物や作物を、別の略奪者たちから守ってやるという名目でその大半を奪っていく。
「この地は神から与えたられた土地だ。」
 ルパパは古くからの言い伝えを語りはじめた。

 はるか昔、神の技を持つ、タボに導かれこの地にやってきた。祖先たちは遥か西のやせた地に住んでいた。豊かな大地を求め、彼は神の使いポポに連れられて、この地へとたどりついた。タボは一族を率いて氷と灼熱の大地を超えた。ある日、一族は雪と氷の斜面の上へとオオカミに追い詰められた。オオカミたちは徐々に斜面を上がってくる。その時、タボは山の精霊へ祈りの雄叫びを挙げた。
「ゴゴゴゴゴ・・・。」
 精霊はタボの声に答えるように低い唸りをあげた。やがて、斜面を雪の塊が落ちてきた。その流れは速く、オオカミたちは逃げる間もなく巻き込まれてしまった。崩れた雪の後に道ができ、一族は無事に氷の大地を超えることができた。

「以来、不思議な技を持つ者は神の使いとしてあがめられるようになった。この地の者は呪術師の能力を技で判断する。強力な技を見せるものほど、有能な呪術師と信じている。わたしは皆が穏やかで幸せに暮らせる方法であればどれでも構わない。」

「何が幸せかは、自分たちで決めるしかない。」
 ダンガは静かにルパパを諭した。
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