非日常
文字数 650文字
「明日は、月に一度の祭りだ。ジンゴロが料理を作ってくれるか?」
いきなり、ヤツに言われて面食らった。
「いつもの味のほうが・・・。」
「おいおい、いつも同じじゃ飽きちまわ。災害みたいな非日常じゃ、いつもの日常が恋しいが、日常が続くと、たまに非日常が欲しくなるものさ。人間てのは無いものねだりをするわがままな生き物さ。」
ヤツの要求は、小梅の料理ではなく、船乗りの料理がいいということだった。
「味が濃いがいいのか?」
「好都合だ。」
山奥のため、海の魚は手に入らなかったが、川魚のソテーや芋のスープなど異国情緒ある料理が並んだ。
「にいちゃん。これどうやって食べるんだい。」
村の人たちは、ジンゴロに気さくに話しかけてくる。
「これが、異国の料理かい。歯ごたえが無いね。」
着飾った言葉も無ければ、おべっかもない。だけど、皆明るく笑っている。ジンゴロは母国の島を思い出した。同じだ。よく笑いよく食べる。普段は気難しい近所の衆もこの日は十年来の親友のように語り掛けてくる。
祭りも架橋に入ると、ジンゴロの一刀彫が出てきた。巨大な竜がほぼ完成している。最後に目を入れた。観客は大喜びだ。竜の体は酢漬けの大根でうろこの部分を、はがしながら客に配る。頭もその場で細切りにして特製のディップソースとともに配る。こうして、食材とそれを恵んでくれた大地に感謝をしながら祭りは終わる。
「にいちゃん、今日はありがとよ。」
客は口々に礼を言いいながら非日常の空間を後にすると、日常へと消えていった。
いきなり、ヤツに言われて面食らった。
「いつもの味のほうが・・・。」
「おいおい、いつも同じじゃ飽きちまわ。災害みたいな非日常じゃ、いつもの日常が恋しいが、日常が続くと、たまに非日常が欲しくなるものさ。人間てのは無いものねだりをするわがままな生き物さ。」
ヤツの要求は、小梅の料理ではなく、船乗りの料理がいいということだった。
「味が濃いがいいのか?」
「好都合だ。」
山奥のため、海の魚は手に入らなかったが、川魚のソテーや芋のスープなど異国情緒ある料理が並んだ。
「にいちゃん。これどうやって食べるんだい。」
村の人たちは、ジンゴロに気さくに話しかけてくる。
「これが、異国の料理かい。歯ごたえが無いね。」
着飾った言葉も無ければ、おべっかもない。だけど、皆明るく笑っている。ジンゴロは母国の島を思い出した。同じだ。よく笑いよく食べる。普段は気難しい近所の衆もこの日は十年来の親友のように語り掛けてくる。
祭りも架橋に入ると、ジンゴロの一刀彫が出てきた。巨大な竜がほぼ完成している。最後に目を入れた。観客は大喜びだ。竜の体は酢漬けの大根でうろこの部分を、はがしながら客に配る。頭もその場で細切りにして特製のディップソースとともに配る。こうして、食材とそれを恵んでくれた大地に感謝をしながら祭りは終わる。
「にいちゃん、今日はありがとよ。」
客は口々に礼を言いいながら非日常の空間を後にすると、日常へと消えていった。