其の六  御蔭 髙 (Ⅳ)

文字数 1,695文字

何か屈託があるようで、帰ってきてからも表情が冴えない。
倶楽部は休みなので、希も甘えたの末っ子モード。いつもは、お花やお香、体術や棒術について、「福に叱られた、ほめられた」「叩かれた、飛ばされた」「怜ちゃんはすごい」「夕さんの舞はもっとすごい」と、一日の出来事を楽しく話してくれるのだが、今日はそれもない。「この間、夕が幹事長の話してたよ」と言っても、「あっ、はい。ありがとうございます」と、トンチンカンで紋切り型の返答しかしない。
普段であれば、マッサージをしていると「うぐぐぅ、痛いです」と断末魔の雄叫びを上げたり、「あぁ~」「ウ~ン」と誘うような声をあげて、小さなお尻がポッコリと浮かび出たりするのだが、今日は仰向けにしても、うつ伏せにしても、「はい、すいません」と、ワンテンポ遅れて、身体を動かすだけで反応が薄い。
強い心配や心痛というより、気になることがあるのだろうか。隣で、ストレッチをしている円に目配せすると、彼女も「そうなんです、ちょっと変なんです。電池替えましょか」と言いたげに、軽く微笑みながら右に首を傾げる。

ごろりと仰向けにすると、小正月の蒲鉾のように、均整のとれた白い身体をまっすぐに伸ばしている。
眉を軽く寄せたり戻したりする以外、ほとんど表情を変えず仰臥位の姿勢を正しく保っている。
両足首を揃え、腰が少し浮き上がるくらいまで、天井に向けて垂直にゆっくりと吊り伸ばす。そのまま膝を左右に割らせて踵を合わせ、タイヤ交換のジャッキのように股関節を大きく左右に拡げながら、薄いピンクのペディキュアをゆっくりと降ろしてくる。その上に体重をかけハムストリングを伸ばすように身体を寄せると、申し訳程度にしか生えていない茂りを分けて、一気に奥まで差し入れた。
「アン」
真上から顔を寄せると、大きな眼をパチパチ見開いて、僕がそこにいるのに初めて気づいたような、何が起きたのかとびっくりした表情になる。
「希、心ここにあらずという感じやな」
中に入れたまま、固定していた足首を離し、身体を前に傾け肩を床に押し付ける。
「そんなことありませんよ。ちゃんとコウ様のお話しお聞きしてましたよ。今日はお花を上手に活けれたって、福さまに褒めていただいたって話でしたよね。ねぇ、円さま、そうですよね」
組み敷かれたまま、慌てて首を振る。失敗を誤魔化すように、媚びるような仕草で僕の背中に長い足を絡みつけ、中で僕のものをキュッキュッと締め付けてくる。
「希が、ばばに褒められるのは二〇年早いわ」
そう笑いながら右頬をつまんで、ゆったりと希の中で回転させるように腰を操ると、「あぁ~ん、本当ですよ、聞いてましたよ。あぁ~」と声のトーンをあげながら、次第に目がトロンとしてくる。
それを見ていた円も、希の頭の上から顔を近づけて参戦。「希、お買い物で何かあったんでしょ。福さまが『この最中、変わった食べ方だけど、とっても美味しいわね』っておっしゃっても、生返事だったし…」と、ピンとしこったピンク色の乳首を弄ぶように、指で輪をつくって人差し指ではじき始める。
「それに、せっかく高島屋さんで買ってきたコウ様のウイスキー、御屋敷に忘れて置いてきたでしょう。私が持って帰ってきてあげたけど…」と言うと、広がった官能の上に「しまった」という表情を交差させ、整った眉間にしわを寄せる。

すでに希の両手は頭の上で重ねて、円の左手に抑えられている。
「たいしたことではないんですけど、ちょっと気になることが…」と話し始めるが、小ぶりの可愛い乳頭が、円の口唇の中で吸われ転がされて声にならない。
「あぁ~、ごめんなさい。そこはまだダメです、二人掛かりなんてずるい…」
そう言って身体をくねらせて抵抗するが、円の右手はつながった希の下腹部に伸び、陰核も、乳首と一緒にやわらかく刺激的に摩り上げられている。
「生返事のお仕置きをたっぷりしてから、希の気になる話をきいてやろう」
笑いながら、扇を広げるように両足を割って腰に力を込めると、「ふぅわぁ~」と大きな声を出して、陸にあげられたナマズのように身体をくねらせ、ピクピクと電気が走ったようにビクッと跳ねた。
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