其の弐拾  御蔭 髙 (XII)  

文字数 2,538文字

目鼻立ちの整ったスレンダーな永井の後妻(黒木朱美)と赤沢の女であるグラマラスなクラブホステス(篠塚真理子)。二人は永井の息子が圧死させられたドラム缶の前で、永井や赤沢たちの前で裸にされ、処刑を担当する一〇人ほどの男たちに弄ばれていた。
「冥途のみやげに、こいつらにもいい思いさせてやれ」
そう言って笑うと、三人組の前に引き出された。
「一番若いのからだ」
後ろ手と足首を縛られたまま、ジーンズとトラ柄のトランクスを引きずり下ろす。
「ひぃ、たっ、助けてください」
両足の付け根にのめり込んだまま、男たちの嘲笑と指示に従って交互に摩られたり、手で擦ったり、顔を突っ込んで引っ張り出そうするが、土の中から出てくる気配はない。
武闘派も同じ。
「情けねぇやつだな。据え膳喰わぬは男の恥っていうだろうが」
「最後の晩餐になるかもしれねえのに、姐さんに恥かかすんじやねえよ」
その嘲りは、関西なまりではない。
女たちは自分たちが殺されないと聞いてほっとしたのか、恥も外聞も、貞操も節操もなく、永井や赤沢の前で観覧者に媚びるように胸や陰部を押し付けたり、括られて閉じられた股の間に顔を突っ込んで吸い上げていく。
唯一、微かな反応を見せたのが、兄貴分の黒服だった。
足枷をほどかれ、顔に黒木の尻を乗せられ、二人がかりでペニスを吸われて、ようやくむっくりと竿を立ててきた。それを待っていたのか「来世は女で生まれてこい」と笑われながら、大きな枝切ばさみで根元からちょん切られ、血を拭きだして悶絶、昏倒した。

場面がかわると、女二人は古いダンスホールのような場所で、闇の世界の住人が巣くう地下の陵辱ショーの舞台に上げられていた。バカアピールの番組さながらに、中学生レベルの算数の問題や、前のアメリカ大統領は誰かといった一般常識クイズのほか、「ペニスを模った性具を先に相手のまたぐらに刺した方が勝ちというプロレス」「男性器を模した張り型を体に入れての綱引き」「どちらが先に犬を口だけで射精させらるか」といった淫靡な競技で二人を競わせる。その勝敗の行方をベネチアンマスクをつけた観客に一口、十万の単位で賭けさせている。
司会も正体がバレないよう狼の被り物をしているが、その声は公共放送の元有名アナウンサーだという。滑稽な答え、スポンと音を立てて抜ける張り形、キャンキャンと逃げ惑う犬にひっかかれながら、「がんばれ」「しっかりやれ」といった嘲りの声が飛ぶ。
敗者には罰則が用意されている。永井の妻(黒木朱美)が、四肢を鎖で大の字に拘束され、透明の水槽のようなものに入れられている。その女性器や肛門の穴の中に、陰茎よりも太い蛇が、舌先を出しながら頭からヌルヌルと入っていく。それが直腸の中で動き回り、下腹部が蠢くのは、陰惨、凄惨という言葉以外の何物でもない。赤沢の女の篠塚真理子には、ゴキブリと鼠。顔や胸の上をゴソゴソと走り回り、陰部に差し込まれたチーズをカリカリとかじり取る。白目をむいて泡をふく姿に拍手喝采がこだまする。

「ここで、お二人をよくご存じだと言う方にご登場いただきましょう」
七五三の写真やSNSに上げられた制服の映像がスクリーンに映され、黒木は公務員、篠塚真理子はグラビアモデルになりたかったという中学の卒業文集が大爆笑とともに読み上げられる。その昔、付き合っていたという彼氏、親戚といった男性が特別ゲストとして壇上にあげられる。
「篠塚真理子さんが高校時代お付き合いされていたレオンさん。黒木朱美さんには一緒に駐車場の管理人をされていたという叔父さまです」
一人は、針に掛けた男のようだが、相当量の覚せい剤を打たれているのか、口元からはよだれが垂れ下がり廃人のようで見る影もない。もう一人の若い男も同じ。
「真理子さんは、レオンさんが初めての男だったそうですね」
「最初はフェラもできないオボコだったんですが、族の頭やってた俺に振られてから寂しかったのかヤリマンになっちゃいました。童貞殺し、デカクリのマリコって有名でした」
「憧れの暴走族の総長レオンさんに、抱いてもらうのは15年ぶりだそうですね。篠塚さんよかったですね。がんばっていただきましょう」
そういうと、もう一人の初老の男性にマイクを向ける
「朱美さんは、高校生の時は生徒会の会計を任されるほど優秀な方だったそうですね」
「朱美の母親だったわしの妹は男作って逃げ寄りまして、かわりにオシメを変えてやりました。つるつるの可愛いマンコでしたわ。ヒヒッ」
「では、その時のことを思い出して、ハッスルしていただきましょう」
どちらの男も歯はぼろぼろ、呂律は怪しく、目は血走り、下腹部を膨らませながら手は震えている。幼少期から青春の楽しかった記憶を、わざわざ思い出させ、最大限に貶めてから、その人生全てを石臼ですりつぶすように凌辱していく。
「いやぁ~ やめて~」
「やめて~ お願い~」
狭い檻の中を逃げ惑う二人の横で、煽るような手拍子、罵倒、嘲笑が交錯する。
陣の調査によってわかった参加者の一覧を見ると、政治家、企業経営者だけでなく、マスコミ関係者、芸能人や大学教授などのコメンテーターも数多く参加している。男性が七割を占めるが、若い女性経営者、先鋭的な政府批判で名をあげた野党の女性政治家もいる。年齢は二〇代から八〇代までと幅広い。それぞれにマンツーマンで首輪をつけた若い男女がはべり、半裸で胸を揉んだり揉ませたり、陰部をまさぐったりしている。いずれも中学生程度のアイドルの卵だという。
これを見るだけで、裏社会の「ハニートラップ」に頭の先までどっぷり浸けられた反社会的な正義が、日本をくまなく覆っていることが一目でわかる。

終盤では、女性器を表す刺青を頬と額に彫られ、身体を二つ折りにされ、足を高く上げて陰部丸出しで便器がわりに置かれている。口の中にペニスを突っ込まれ、そのまま小便をかけられゴボゴボ言いながら飲まされる。それに興奮して、そのまま陰部にペニスを突っ込むワイドショーの有名司会者、それを見て狂ったように笑う女性政治家。飽きられ、利用価値がなくなれば、より残酷なショーに売り飛ばされ、狂って死ぬまでアンダーグラウンドに暮らす異常な性癖の住民たちの見世物、慰み者にされるのだろう。

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