お告げ

文字数 732文字

出張で九州に来ています。
暑い中、スーツ姿なので、結構しんどいですね。

おまけに長距離バスに乗り遅れて、次のバスまで30分待たなきゃならないんですよ。
今日はついてないです。

バスセンターの中は、あちこちに向かうバス待ちの人で、結構ごった返しています。
僕は待合ベンチに座って、本を読みながら暇つぶしをしようと思いました。

すると僕の隣に腰かけた人が、話し掛けてきたんです。
「こんにちは。少しよろしいですか?」

何だろうと思って、その人を見ると、ピンクのワンピース姿の中年女性でした。
今まで会ったこともない人です。

「初めまして。私、スミダと申します」
女性は、ニコニコと笑みを浮かべながら、名乗りました。

――やっぱり初対面だよね。
僕がそう思っていると、スミダと名乗った女性は、笑顔で僕を見つめながら言いました。
「私、〇〇教の使徒をしております。〇〇様はご存じですよね?」

――あちゃあ。また宗教勧誘かよ。
僕は思わず引きます。
結構僕って、勧誘を受けやすいんですよね。

しかしスミダさんは、引き気味の僕に構わず話し続けます。
「今日は、〇〇様の有難いお告げを受けて、東京から参りましたの」

――やばっ!この人、眼が完全に行っちゃってるよ。
僕はどうやってこの場を凌ごうか、必死で頭を巡らせますが、いい考えが浮かびません。

「お告げですか。遠くから大変ですね」
僕は取り敢えず、その場凌ぎの答えを返しました。

するとスミダさんは、傍らに置いたバッグから、何か取り出しました。
よく見るとそれは、出刃包丁でした。

「これから、あなたを殺させて頂きますね」
スミダさんは、恍惚とした笑顔で、包丁を僕に突き付けたのです。

「な、何で?」
そう言って絶句する僕に、スミダさんは笑顔で宣告しました。

「〇〇様のお告げです」
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