かくれんぼ

文字数 712文字

『もういいかい?』
夜道を歩いていると、足元で声がした。

驚いて見ると、小学校低学年くらい女の子が、私を見上げている。
どこかで見た顔だ。

その時私の記憶がフラッシュバックした。
思い出した。ミヨちゃんだ。

次々と私の中で、幼い頃の記憶が蘇る。
20年前、私が小学1年生の時、当時仲の良かったミヨちゃんと、近所の公園でかくれんぼをしていたのだ。

私が隠れる番になって、公園の茂みの中に隠れ、ミヨちゃん見つかるまいと、姿勢を低くして、じっとしていた。
しかし時間が経っても、ミヨちゃんは探しに来ない。
おかしいと思った私は、顔を立ち上がって公園の中を見回したが、ミヨちゃんはいなかった。

暫く様子を見ていたが、ミヨちゃんの姿が一向に現れないので、私は公園中を探し回った。
それでもミヨちゃんは見つからない。
怖くなった私は、家に走って戻ると、母に事情を告げた。

「きっと先にお家に帰ったんじゃないの?」
そう言って笑った母は、近所にあったミヨちゃんの家に行って、様子を尋ねてくれた。
しかしミヨちゃんは家に帰っていなかった。

私の母とミヨちゃんのお母さんは、さすがに心配になったらしく、一緒に公園まで行ってミヨちゃんを探したが、ミヨちゃんを見つけることが出来なかった。
結局ミヨちゃんは、そのまま行方不明になってしまった。
私は今の今まで、そのことを忘れていたのだ。

『もういいかい?』
足元のミヨちゃんが、私を見上げてもう一度言った。

――ミヨちゃん、あれからずっとかくれんぼしてたのかな。
急に悲しい気持ちが込み上げてきて、私は呟いていた。
「もういいよ」

するとミヨちゃんは、とても嬉しそうな顔で言った。
『カナちゃん、見つけた』
そしてミヨちゃんは、静かに消えていった。
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