ゴミ屋敷
文字数 693文字
私の住む町に、広い庭付きの古い家がある。
その家の庭には、いつの頃からか色々なものが積み上げられて、ゴミ屋敷と呼ばれるようになっていた。
積み上げられたものが崩れたり、異臭を放ったりするため、近隣住民から苦情が出ているようなのだが、私有地の中のことであるためか、行政も手を拱いているらしい。
ある日私は、偶々その家の前を通ることになった。
家が近づいて来ると、異臭が漂い始める。
その匂いに閉口しながら、さっさと家の前を通り過ぎようとして、何気なく庭を覗いた私は、思わず立ち止まってしまった。
奥に積まれた箱からはみ出しているものが、目に留まったからだ。
――まさかな。
そう思って、そのまま通り過ぎようとしたが、どうしても気になる。
私は意を決すると、開け放たれた門から中に入って行った。
奥に進んで、それに近づいて行くにつれ、動悸が激しくなる。
箱の前に立った私は、はみ出している布を手に取ってみようとした。
見覚えのある柄の布だったからだ。
「何か気になる物がありましたか?」
その時突然、背後から声が掛かった。
驚いて振り向くと、上下灰色の作業着を着た、小柄な男が立っていた。
「ああ、そこからはみ出している物ですね。私は、この街に捨てられたものを集めているのですよ。いつか持ち主が取りに来られる日を、お待ちしておりましてね」
そう言いながら男は、箱に近づいていく。
そして蓋を開けると、中の物を、「よっこらせ」と言いながら取り出した。
「これは20年ほど前に、あなたがお捨てになった、奥様のご遺体ですよ。さあ、お持ち帰り下さい」
妻の遺体を差し出しながら男は言った。
妻は、20年前に私が殺して捨てた時のままだった。
了
その家の庭には、いつの頃からか色々なものが積み上げられて、ゴミ屋敷と呼ばれるようになっていた。
積み上げられたものが崩れたり、異臭を放ったりするため、近隣住民から苦情が出ているようなのだが、私有地の中のことであるためか、行政も手を拱いているらしい。
ある日私は、偶々その家の前を通ることになった。
家が近づいて来ると、異臭が漂い始める。
その匂いに閉口しながら、さっさと家の前を通り過ぎようとして、何気なく庭を覗いた私は、思わず立ち止まってしまった。
奥に積まれた箱からはみ出しているものが、目に留まったからだ。
――まさかな。
そう思って、そのまま通り過ぎようとしたが、どうしても気になる。
私は意を決すると、開け放たれた門から中に入って行った。
奥に進んで、それに近づいて行くにつれ、動悸が激しくなる。
箱の前に立った私は、はみ出している布を手に取ってみようとした。
見覚えのある柄の布だったからだ。
「何か気になる物がありましたか?」
その時突然、背後から声が掛かった。
驚いて振り向くと、上下灰色の作業着を着た、小柄な男が立っていた。
「ああ、そこからはみ出している物ですね。私は、この街に捨てられたものを集めているのですよ。いつか持ち主が取りに来られる日を、お待ちしておりましてね」
そう言いながら男は、箱に近づいていく。
そして蓋を開けると、中の物を、「よっこらせ」と言いながら取り出した。
「これは20年ほど前に、あなたがお捨てになった、奥様のご遺体ですよ。さあ、お持ち帰り下さい」
妻の遺体を差し出しながら男は言った。
妻は、20年前に私が殺して捨てた時のままだった。
了