蔦の絡まる家

文字数 781文字

私の住む町に、廃屋になった民家があります。
持ち主がいないのか、随分と長い間放置されたままになっています。

その廃屋の壁や屋根には、太い蔦がたくさん絡まっていて、見る人に、建物全体が蔦の籠に包まれているような印象を与えていました。

そんな外観のためか、その家には色々と変な噂が立っていました。
やれ、窓から何かが外を覗いているとか、やれ、夜になると仄かな灯りが屋内を漂っているとか、そういった怪談めいた噂話でした。

ある時、近所に住む中学生の6人組が、夜その家に忍び込んで、肝試しをしようと企てたようです。
若者にありがちな、興味本位の暇つぶしだったみたいですね。

家の前に6人は集まり、1人ずつ中に入って屋内を探検することにしたそうです。
入ったら2階に上がり、そこで後から来る仲間を待つことにしたようです。

1人、また1人と懐中電灯を手に持って、壊れた玄関から中に入って行きました。
そして最後に1人残った子以外、誰も戻らなかったそうです。

その子の話によると、家の中も外と同様に、蔦が生い茂っていて、中々前に進むことができなかったようです。
そしてその子は、家の中で蔦に絡めとられて宙に浮いている友達を見つけたのだそうです。

あまりのことに悲鳴すら上げられずにいると、その子の周囲にあった蔦が、ざわざわと蠢きながら、最後の子を絡めとろうと近づいて来たらしいのです。
その子は恐怖のあまり大声をあげながら、必死で外に走り、何とか外に出ることができたそうです。

外に出た子は、その場に座り込んで、朝までずっと放心状態だったらしいです。
近所の人がその子を見つけ、警察に通報したようです。
警察はその家の中を隈なく捜索したらしいですが、5人の中学生は結局見つからなかったそうです。

やがて家の壁を伝う蔦に、大きな5輪の花が咲いたらしいです。
そしてその花が散った後、蔦には5個の首がなったそうです。
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