心霊写真

文字数 886文字

「霊は絶対いるんだって」
友人のトモヒロが主張する。

「いる訳ないじゃん、霊なんて。お前見たことあるの?」
僕は真っ向から反論した。

「俺は実際見たことはないけど、やっぱ霊はいるんだって」
「見たこともないのに、何でいるって断言できるわけ?」
僕の反論に、トモヒロは段々むきになってきた。

「心霊写真とかあるじゃん。あれが証拠じゃん」
「あんなの全部、光の加減で、何か別の物が偶々霊に見えたとか、写した奴が何かトリックとか使ってるんだって」

「お前って、本当に頑固だよな」
「お前の方こそ」
僕とトモヒロは、意地になってお互い一歩も引かない。

このままでは埒が明かないので、トモヒロの提案で、あちこちの心霊スポットを巡って、実際に写真を撮ってみようということになった。
トンネル、滝、廃病院、墓地。
20か所以上を巡って、僕の写真をトモヒロが撮りまくる。

最後の心霊スポット、廃業したまま買い手がつかず放置されているホテルの前で写真を撮ろうとすると、トモヒロが急に怯えた声で言った。
「ここ止めとこう。何かやばい雰囲気だよ」

僕はトモヒロが、この場所に幽霊がいたと、後から主張しようとしているのだと思い、是が非でも写真を撮らせようとした。
「いいから撮れよ。ここで最後だろ。それともお前、後になってここに幽霊がいたとか言おうと思ってんじゃねえの?」

トモヒロは僕の言葉にムッとして、写真を数枚撮影する。
写真は僕のスマホで撮影したので、一緒に見ようと誘ったが、絶対に嫌だと言って、トモヒロは帰っていった。

家に帰った僕は、撮ってきた写真を1枚ずつ確認する。
トンネル、滝、廃病院、墓地。
どの写真にも霊など写っていない。

そしてトモヒロが嫌がった、廃ホテルの順番になった。
僕はもしかしてと思いつつ、写真を見たが、結局何も写っていなかった。

――ほら見ろ。結局心霊写真なんて嘘じゃん。
そう思った時、耳元で掠れた声がした。
「どうして写ってないんだろう」

驚いた僕は、恐る恐る声の方に顔を巡らせる。
そこには逆さまにぶら下がった、女の青白い顔があった。
長い髪は下に垂れ下がっている。
大きく見開かれた眼が、下から僕を見下ろしていた。

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