集合写真

文字数 994文字

高校時代の友達の、Tの部屋に集まって、3人で飲み会をしていた時でした。
Tが高校の卒業アルバムを出してきたので、皆で見ようということになったのです。

3ページ目に僕たちのクラスの集合写真があったので、それを見ながら、「誰それは、今何してる」とか、「誰それと誰それが結婚した」とか、ワイワイ言いながら盛り上がっていたのです。

すると、Kが突然写真の中の1人を指さしました。
「こいつって、Aだっけ。何でこいつ、Tのこと見てんだろう?」

僕とTが見ると、それは同級生のAという女子で、確かに目線が斜め下のTを見ているように思われました。

「お前に気があったんじゃね?」
僕が冗談で言うと、Tが少し怒り気味に返してきました。

「止めろよ。Aって、高校出た後、行方不明になってるとかいう話だぞ」
「何で?」
「よく分からんけど、突然いなくなったらしい」

僕たちは何となく、不審に思いましたが、結局すぐに別の話題に移って、そのことは忘れていたのです。

そして3日後、Tの訃報が届いたのです。
交通事故でした。

通夜の席でKに遇うと、真っ青な顔をしていました。
ショックだったんだろうなと思って、話し掛けると、Kは僕を式場の隅に連れて行ったのです。

「昨日、偶々アルバム見たら、Aが俺の方見てたんだよ」
Kの言葉の意味が解らず、僕は訊き返しました。

「何言ってんの?Aって、お前の隣に立ってたじゃん」
「だから、横向いて、俺を見てたんだよ」

「お前さあ、Tの通夜の席なんだから。冗談こいてる場合じゃないだろう」
僕が少し怒り気味に言っても、Kは泣きそうな顔をするだけです。

僕は呆れて、Kを促すと、通夜の席に戻りました。
しかし、その夜家に帰って、卒業アルバムを見てみると、Kの言った通りだったのです。

先日Tの部屋で見た時は、Aは斜め下のTに視線を向けていたのに、今は真横を向いて、隣のKを見ているのです。
僕は訳が分からず、怖くなってアルバムを押し入れに仕舞い込みました。

そして3日後、Kの訃報が届きました。
心不全を起こして、部屋で倒れていたそうです。

僕は怖くなって、押し入れに仕舞ったアルバムを取り出しました。
そして恐る恐る、クラスの集合写真のページを見たのです。

写真の中のAは真後ろを向いて、僕を見上げていました。
――何でだよう?俺らAに何かしたか?

恐怖で泣きそうになりながら、ふと窓の外を見ると、Aが僕の部屋を見上げて、笑っていたのです。
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