第44話  亮介の場合  水曜日の妻 3

文字数 533文字

俺は男を見た。
若い男。背も高いし、ちょっとしたイケメンである。
こいつが『尊君』か・・・。でも、何で『英子さん』なんて名前呼びなの?
俺はむっとしたが顔には出さないで男を見る。

「尊君。このヒト、ウチのダンナです」
英子が言った。
尊君はにっこりと笑って頭を下げた。
「初めまして。カウンセリング講座でお世話になっています。山本と申します。若輩者なので英子さんにはいろいろと教えてもらっています」

俺もにこやか~に頭を下げる。
「いやいや、こちらこそお世話になっています。今日は打ち上げですね。無事に終わって良かったですね。私もほっとしましたよ」
本音を交える。
「すごく協力的なご主人だと英子さんからお聞きしています」

・・・その「英子さん」というのをやめろよ。

「そんな事は無いですよ」
俺は笑った。

「あ、尊君。もう行かなくちゃ」
英子が時計を見ながらそう言った。
・・・その『尊君』もやめろよ。

「じゃあね。パパ。宜しくね。」
「ああ。行ってらっしゃい」
「じゃあ、尊君。行きましょう」
「はい。では、失礼します」
男はそう言った。
俺は頷いた。

二人は並んで歩いて行く。
「英子さん。今日も素敵ですね」
男は言った。
「あら、有難う」
そんな会話が聞こえた。
俺はその後姿を見ていたが、踵を返して改札に向かった。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み