第35話  和巳の話  アキラと拓斗

文字数 1,018文字

パパは覚えていた。
「ああ。覚えているよ。ハーフの子だろう?イケメンでモデルみたいな。めちゃくちゃ上手かったな。目立っていたよ。中学生並みに背が高かったしね」

「あの子が入って来てからチームの勝率がぐんと上がったな。リーダーシップがあって、チームの司令塔みたいな感じだったな。・・・応援に来ていた親達にもきちんと挨拶をして、礼儀正しい子だなと思っていたよ」
パパは言った。
僕は頷いた。

 アキラが僕のクラスに転入してきた日、学校の3Fはちょっとして騒ぎになったらしい。
「めちゃくちゃカッコいい男の子が5-Aにやって来た」
あっという間に噂は広がり、隣のクラスだけじゃなくて6年生まで見に来たらしい。
6年女子がキャーキャー五月蠅くて大変だったという事だ。
何故、伝聞形かというと、その週、僕はおたふくかぜで休んでいたからである。

 おたふくかぜから復活して学校へ行くと、見た事の無い綺麗な子がクラスにいるのでびっくりした。
よっちゃんが「あの子、アキラって言うんだ。和巳が休んでいる時に転校して来た」と教えてくれた。
「サッカーをやりたいって言うから、ウチのクラブを紹介して置いた。前に住んでいた所でもやっていたらしいぜ」
よっちゃんはそう付け足した。

 アキラは背が高くて、手足が長くて色が白くてブラウンの髪と瞳を持っていた。
しなやかで明るくて、成績優秀、運動神経抜群。
「神様は不公平だ」。
ウチのクラスの男子は皆そう思ったに違いない。勿論僕もそう思った。

 僕がすっかり回復してクラブの練習に参加した頃には、アキラはすでにチームに馴染んでいて、まるでずっとクラブにいたみたいに皆と仲良くなっていた。

 若竹サッカークラブは小規模なクラブで、地元の幾つかの小学校へ通う子供達が参加していた。主体は第二小学校だが、そこにぱらぱらと他の小学校から数人が参加していると言う感じ。僕の学校からは同じクラスのよっちゃんと隣のクラスのショウヘイ、それとマサキの4人。他、6年生が3人。女子もいる。
小学校低学年の部と高学年の部がある。
練習は週に2回。水曜日と日曜日。拓斗はたった一人で第四小学校から来ていた。


 一体何が起きたか。
一言で言ってしまえば、アキラがチームを仕切る様になって、拓斗がアキラやみんなにハブられたって事なんだけれど。そして拓斗と仲のいい僕は非常に微妙な立場に立たされた。
 ある意味、拓斗はまだいい。学校が別だから。

 アキラと同じクラス。
これが一番厄介だった。


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