第11話  梨乃の場合  ウォーキング

文字数 662文字

夕食を食べて後片付けを済ませると、ママが言った。
「ちょっとウォーキングをして来る」
私は驚いた。
「えっ?今から?だってもう9時過ぎだよ。危ないよ」
「大丈夫。大丈夫。大通りを行って途中で引っ返して来るだけだから。一時間位で帰って来る」
ママは玄関に向かう。
パパは知らない振りでテレビを見ている。
くっだらないバラエティー番組を面白そうに見ている。
「もう。パパがママの事をデブとか言うから、こんな事になったんだからね。責任取って一緒に行きなさいよ」
「嫌だよ。何で俺が。面倒くさい」
パパはテレビを見たまま言った。

「大通りを行くなら大丈夫だよ。若い娘じゃないんだからさ。・・・・そんなんやったって痩せないから。無駄な努力は止めて置いた方が良いんじゃないか?無理して体調を壊すと困るから」
パパはそう言った。
ママは返した。
「一緒に来てもらうなんてこっちの方が迷惑よ。私は考えを整理するために歩くのだから。亮介がいたら邪魔だわ」
おや?
と思った。
『パパ』じゃなくて『亮介』って言った。
パパもちょっと怪訝な顔をした。
「・・・だったら、もっと早く行けばいいだろう?こんな遅くに行かないで」
パパは言った。
「だって夕食の準備も片付けもあるし」
ママは返す。
「じゃあ、片付けは私とパパでやるから。ママはご飯を食べ終わったらすぐに行けばいいよ。・・・パパが余計な事を言うからママのスイッチが入っちゃったんだからね。協力しなさいよね」
私は言った。
「家にいたらね」
パパはそう返してテレビに戻る。
本当に憎らしいったらありゃしない。蹴飛ばしてやりたい位だと私は思った。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み