第31話 亮介の場合 ご褒美
文字数 1,432文字
俺が風呂から出て寝室に行くと、英子はベッドの上で眠っていた。
何も掛けていない。
部屋にはクーラーが効いている。
「英子。風邪をひくぞ」
返事がない。
俺は英子の顔を覗き込む。
英子はくうくうと寝息を立てて眠っている。
ほんの少し口を開けて眠るその顔を暫く眺めていた。
ちょっと間抜けなその顔にほっとした。何の悩みも無いみたいな幸せそうな顔だった。
俺は英子の上にタオルケットを掛けてやる。
英子がむにゃむにゃと何かを呟いた。
寝言を言っているのだろうか?
俺は何を言っているのか聞こうとして、口元に耳を寄せた。そうしたら英子は突然両腕を伸ばして、俺の首に絡めた。
英子は目を閉じたまま「へへへ」と笑う。そして俺を引き寄せた。
俺は英子の上に体を重ねて、髪に顔を寄せた。英子は俺の足に自分の足を絡ませる。
「狸寝入りが上手いな」
俺は言った。
「いや、眠っていたのよ。本当に。今、起きたの。・・・うーん。いい気持ち。すっかり酔ってしまったわ。美味しいワインだった。」
「いい店だったの?」
「うん。素敵なお店だった・・・ねえ。亮介。キスして頂戴」
英子はそう言って目を閉じた。
俺は英子の唇に触れた。舌が絡まり、俺達は長くて深い口付けをした。
酔っているせいかとても濃厚なキスで、俺はすっかり体も心もその気になってしまった。
英子の吐息が漏れた。すごく色っぽい吐息。それは俺の五感を刺激して、電気信号が超高速で指令を出す。
「行け!行くんだ!」
「はい!隊長!」
俺の神経は一斉に目的に向かう。
「亮介。私、生理が終わったよ」
英子が言った。
「そうか。ようやく終わったか。俺はもう待ちくたびれたよ」
「うん。じゃあ、今日はご褒美ね」
「何のご褒美?」
「早く帰ってきたから」
英子はそう言うと俺を抱き締めた。
「だって、寂しかったの。いつも残業だって言って遅いから」
英子は言った。
その言葉が俺の胸に突き刺さった。
ワクワクしていた俺の心は一気に冷水を浴びた。
俺の全神経は「えっ?」という顔で英子を見た。勿論、隊長も。
そして項垂れた。
俺は英子を固く抱きしめて言った。
「そんな事は無いよ。忙しかったのは一時期だけだっただろう?」
「亮介。私の事を愛している?」
英子は目を閉じたまま言った。
「愛しているとも。すごく愛している。当たり前だろう?」
そう返した。
なんだかすごく胸が痛かった。
けれど、その痛みの事を考えたくは無かった。
考えると辛くなるから。
それはまた後で考えればいい。今じゃなくて。
そう思った。
今は違う。
今は、そんな悲しい事を考えなくていい。後にしてくれ。お願いだから後にして。
折角のいい気分が。
「考えるな。今はそんな場合じゃ無い!」
脳から指令が出る。
「はい!隊長」
「英子。こっち、俺のベッドの方に来て」
俺は言った。
「お姫様抱っこして連れて行って欲しい」
英子が両腕を伸ばした。
「マジで?大丈夫かな?」
そう言って俺は準備運動をした。
「腰をやられると元も子もなくなるからな」
英子は笑って見ている。
「行くぞ。いいか?」
「落とさないでよ」
「分かった」
俺は英子を「えいやっ」と抱き抱えた。
思わずよろけたが、両足を踏ん張り、よろよろと歩いて妻をベッドに運んだ。
英子はあはははと笑っている。
俺は英子をベッドに転がす。
俺はドアを開けてリビングを見た。
リビングの電気は消えていた。風呂の明かりは灯っている。誰かが風呂に入っているらしい。
俺は寝室の鍵をかちゃりと掛けた。
今日はエリと行かなくて本当に良かったと思った。
そして妻の待つベッドへダイブした。
何も掛けていない。
部屋にはクーラーが効いている。
「英子。風邪をひくぞ」
返事がない。
俺は英子の顔を覗き込む。
英子はくうくうと寝息を立てて眠っている。
ほんの少し口を開けて眠るその顔を暫く眺めていた。
ちょっと間抜けなその顔にほっとした。何の悩みも無いみたいな幸せそうな顔だった。
俺は英子の上にタオルケットを掛けてやる。
英子がむにゃむにゃと何かを呟いた。
寝言を言っているのだろうか?
俺は何を言っているのか聞こうとして、口元に耳を寄せた。そうしたら英子は突然両腕を伸ばして、俺の首に絡めた。
英子は目を閉じたまま「へへへ」と笑う。そして俺を引き寄せた。
俺は英子の上に体を重ねて、髪に顔を寄せた。英子は俺の足に自分の足を絡ませる。
「狸寝入りが上手いな」
俺は言った。
「いや、眠っていたのよ。本当に。今、起きたの。・・・うーん。いい気持ち。すっかり酔ってしまったわ。美味しいワインだった。」
「いい店だったの?」
「うん。素敵なお店だった・・・ねえ。亮介。キスして頂戴」
英子はそう言って目を閉じた。
俺は英子の唇に触れた。舌が絡まり、俺達は長くて深い口付けをした。
酔っているせいかとても濃厚なキスで、俺はすっかり体も心もその気になってしまった。
英子の吐息が漏れた。すごく色っぽい吐息。それは俺の五感を刺激して、電気信号が超高速で指令を出す。
「行け!行くんだ!」
「はい!隊長!」
俺の神経は一斉に目的に向かう。
「亮介。私、生理が終わったよ」
英子が言った。
「そうか。ようやく終わったか。俺はもう待ちくたびれたよ」
「うん。じゃあ、今日はご褒美ね」
「何のご褒美?」
「早く帰ってきたから」
英子はそう言うと俺を抱き締めた。
「だって、寂しかったの。いつも残業だって言って遅いから」
英子は言った。
その言葉が俺の胸に突き刺さった。
ワクワクしていた俺の心は一気に冷水を浴びた。
俺の全神経は「えっ?」という顔で英子を見た。勿論、隊長も。
そして項垂れた。
俺は英子を固く抱きしめて言った。
「そんな事は無いよ。忙しかったのは一時期だけだっただろう?」
「亮介。私の事を愛している?」
英子は目を閉じたまま言った。
「愛しているとも。すごく愛している。当たり前だろう?」
そう返した。
なんだかすごく胸が痛かった。
けれど、その痛みの事を考えたくは無かった。
考えると辛くなるから。
それはまた後で考えればいい。今じゃなくて。
そう思った。
今は違う。
今は、そんな悲しい事を考えなくていい。後にしてくれ。お願いだから後にして。
折角のいい気分が。
「考えるな。今はそんな場合じゃ無い!」
脳から指令が出る。
「はい!隊長」
「英子。こっち、俺のベッドの方に来て」
俺は言った。
「お姫様抱っこして連れて行って欲しい」
英子が両腕を伸ばした。
「マジで?大丈夫かな?」
そう言って俺は準備運動をした。
「腰をやられると元も子もなくなるからな」
英子は笑って見ている。
「行くぞ。いいか?」
「落とさないでよ」
「分かった」
俺は英子を「えいやっ」と抱き抱えた。
思わずよろけたが、両足を踏ん張り、よろよろと歩いて妻をベッドに運んだ。
英子はあはははと笑っている。
俺は英子をベッドに転がす。
俺はドアを開けてリビングを見た。
リビングの電気は消えていた。風呂の明かりは灯っている。誰かが風呂に入っているらしい。
俺は寝室の鍵をかちゃりと掛けた。
今日はエリと行かなくて本当に良かったと思った。
そして妻の待つベッドへダイブした。