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文字数 1,509文字
「敵、総数54。内、中型36、小型18。いつもより多いですね」
(しかも、中型が半分以上か)
激戦区であるこの地域でも珍しい不利な戦場に、甲信越軍本部のオペレーターは冷や汗を流す。
まずいつもより数が多い。
また通常は中型の子飼いのようなものが小型であって、数だって小型の方が多い。中型を人型が相手して小型を歩兵が相手をするような形式が基本になる。およそどの小隊でも人型より歩兵が多いのはそのためだ。
なのに今回はそれが逆転している。
それだけではない。ここしばらく一週間も空かないような連戦に、人も人型も整備班も、全部ひっくるめ甲信越軍全体の状態がよろしくない。
しかも今回は関東軍の陣のある方もほぼ同時に敵の大きな群れに襲われており、仮に不利が続いて瓦解しかけたところで普段のような協力は期待できない。
まるで自分達の状況を敵に気づかれているかのような気持ち悪さだとオペレーターは思う。
そんな中でも状況説明を受けた上官たちに動揺はなかった。
「何、今回の我々には『青の機人』がいる。噂通りの存在なら負けはすまい」
「仮に噂程でなかったとしても、捨て駒には丁度良い。大袈裟な宣伝をしているくらいだ、多少なりと数は減らしてこよう」
「我々の消耗は最小限で良くなるな」
そう言って、聞くも不快な笑い声をたてて上機嫌な上官達を、オペレーターは見ない振りした。
司令部からの指示をオペレーター経由で受けた古谷は眉間に皺を寄せた。
全くどいつもこいつもと毒を吐きそうになるのを必死に堪える。すぐに言葉を発しない彼を青薔薇姫が不思議に思い問いかけた。
「どうした?」
「一機で玉砕してこい、だそうだ」
実際には違う言い回しだ。
オペレーターは多少こちらの心情に配慮できる人だったのか、かなりオブラートに包んでくれた。が、上から指示されていることをまとめるとこういうことになる。
普通に考えたら自爆命令と変わらない内容。
だが青薔薇姫は楽しそうに笑った。
「それはまた、気持ちいいほど解り易い命令だな」
彼女が本当に楽しそうだったので古谷の中の毒が流されていく。
恐らく青薔薇姫からすれば一人でも出撃していなければその分だけ負傷者も少なく済むからそっちの方が良いと……絶対そう思っている。彼女が平気なら、むしろ喜んでいるなら、古谷はそれでいい。
すでに操縦席に乗り込み神経接続は終わっている。
甲信越軍から送られたものと別に、独自に収集した情報からもっと広い範囲の状況が見えている二人には、少し離れた所に居る先に戦闘が開始されていた関東軍の戦線が現時点で非常に不利な状態にあることが解っていた。
(でも……こんな上官たちじゃあ、なぁ)
関東軍から支援要請があってもまともに対応するか怪しい、気がする。
仮に自分達だけで出撃することで甲信越軍側には余力があっても。
あの場所には自分達が所属していた遊撃隊の誰かだっていないとは限らないのに。
「……青薔薇姫。今回は中長距離、二ついいかな?」
「ほう、何か考えたか」
「うん。青薔薇姫にちょっと頑張ってもらうけど、出来る?」
古谷は、短時間で考えた戦術を青薔薇姫に伝えた。
大部分を彼女に丸投げするような内容は作戦とも言えず、やってることは甲信越軍の上官たちと大差ないとは思う。
その杜撰さを指摘されることも覚悟していたが、青薔薇姫は気にしなかった。
「ふむ、よかろう。私よりもお前に負担が多くないか?」
どころか古谷の方を案じてくれる。
どう考えたって青薔薇姫の方が負担が大きいのに。
だから古谷も即答できる。
「いいんだよ。僕が出来るのはこれくらいだからね」
青い服着た人型が、単機、戦場へと駆けて行く。
(しかも、中型が半分以上か)
激戦区であるこの地域でも珍しい不利な戦場に、甲信越軍本部のオペレーターは冷や汗を流す。
まずいつもより数が多い。
また通常は中型の子飼いのようなものが小型であって、数だって小型の方が多い。中型を人型が相手して小型を歩兵が相手をするような形式が基本になる。およそどの小隊でも人型より歩兵が多いのはそのためだ。
なのに今回はそれが逆転している。
それだけではない。ここしばらく一週間も空かないような連戦に、人も人型も整備班も、全部ひっくるめ甲信越軍全体の状態がよろしくない。
しかも今回は関東軍の陣のある方もほぼ同時に敵の大きな群れに襲われており、仮に不利が続いて瓦解しかけたところで普段のような協力は期待できない。
まるで自分達の状況を敵に気づかれているかのような気持ち悪さだとオペレーターは思う。
そんな中でも状況説明を受けた上官たちに動揺はなかった。
「何、今回の我々には『青の機人』がいる。噂通りの存在なら負けはすまい」
「仮に噂程でなかったとしても、捨て駒には丁度良い。大袈裟な宣伝をしているくらいだ、多少なりと数は減らしてこよう」
「我々の消耗は最小限で良くなるな」
そう言って、聞くも不快な笑い声をたてて上機嫌な上官達を、オペレーターは見ない振りした。
司令部からの指示をオペレーター経由で受けた古谷は眉間に皺を寄せた。
全くどいつもこいつもと毒を吐きそうになるのを必死に堪える。すぐに言葉を発しない彼を青薔薇姫が不思議に思い問いかけた。
「どうした?」
「一機で玉砕してこい、だそうだ」
実際には違う言い回しだ。
オペレーターは多少こちらの心情に配慮できる人だったのか、かなりオブラートに包んでくれた。が、上から指示されていることをまとめるとこういうことになる。
普通に考えたら自爆命令と変わらない内容。
だが青薔薇姫は楽しそうに笑った。
「それはまた、気持ちいいほど解り易い命令だな」
彼女が本当に楽しそうだったので古谷の中の毒が流されていく。
恐らく青薔薇姫からすれば一人でも出撃していなければその分だけ負傷者も少なく済むからそっちの方が良いと……絶対そう思っている。彼女が平気なら、むしろ喜んでいるなら、古谷はそれでいい。
すでに操縦席に乗り込み神経接続は終わっている。
甲信越軍から送られたものと別に、独自に収集した情報からもっと広い範囲の状況が見えている二人には、少し離れた所に居る先に戦闘が開始されていた関東軍の戦線が現時点で非常に不利な状態にあることが解っていた。
(でも……こんな上官たちじゃあ、なぁ)
関東軍から支援要請があってもまともに対応するか怪しい、気がする。
仮に自分達だけで出撃することで甲信越軍側には余力があっても。
あの場所には自分達が所属していた遊撃隊の誰かだっていないとは限らないのに。
「……青薔薇姫。今回は中長距離、二ついいかな?」
「ほう、何か考えたか」
「うん。青薔薇姫にちょっと頑張ってもらうけど、出来る?」
古谷は、短時間で考えた戦術を青薔薇姫に伝えた。
大部分を彼女に丸投げするような内容は作戦とも言えず、やってることは甲信越軍の上官たちと大差ないとは思う。
その杜撰さを指摘されることも覚悟していたが、青薔薇姫は気にしなかった。
「ふむ、よかろう。私よりもお前に負担が多くないか?」
どころか古谷の方を案じてくれる。
どう考えたって青薔薇姫の方が負担が大きいのに。
だから古谷も即答できる。
「いいんだよ。僕が出来るのはこれくらいだからね」
青い服着た人型が、単機、戦場へと駆けて行く。