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文字数 1,225文字

「君が、ほんとに……?」
 さっきまで目の前で一方的惨殺繰り広げていた青い人型と、今自分の怪我を慣れた様子で手当てしてくれている少年がどうしても結びつかずに、手当てされている少年は思わず尋ねていた。
 同じ年頃の相手であるせいか、古谷の雰囲気のせいか、意外に話しかけやすかったのが大きな理由だ。
「うん。これでも一応ね。はい、出来たよ。病院行くまで動かしたら駄目だからね」
 そういう反応に古谷はもう慣れていた。
 関東を出て既に何箇所も戦場を回っている。
 自分ならまだこのくらいの反応で済むが、相方を何も知らない人にいきなり会わせるとろくな結果にならないことも既に学習済みだった。
 なんせ、あの見た目からして普通でない。あの見た目と起こした現実を並べてしまうと大概は恐怖や拒絶が浮かんでしまうらしい。例え自分達を助けてくれた相手だと理性でわかってても、それは本能的な畏怖にも近いのか、特に負傷したり戦闘後で高揚している兵士たちには悪い影響として表に出るのを、見てきた。
 まだ関東では青の機人と同時に操縦者である青薔薇姫の容貌は有名であったが、関東を離れると青の機人の噂だけが先行して、青薔薇姫の噂までは来ていないようだった。
 だから、自分が信頼関係の土台を築くまで極力あの少女は見せないように、最近はしている。

 そうでなくても、人付き合いってモンを判ってないんだよ、あの人は。

 今頃は装甲車に辿り着いているだろう相方の事を考えて、古谷は内心ため息をつく。どうせ今だって普段と変わらず淡々と後片付けを始めている筈だ。青薔薇姫の思考や行動に良好な人間関係維持なんて組み込まれてない。
 戦いさえ出来るなら、どれだけ周りから嫌われようが気にしない人。
「しかし、ほんとに噂どおりなんだな、青の機人ってのは」
 掛けられた声に振り返ると若い男がいる。姿からして、オペレーターだろう。
 年齢は少し上で背が高い。一部の女子にモテそうな見た目だなぁと古谷は観察する。
「俺達が自爆を覚悟した戦闘を、ひっくり返しちまった。できるならもっと早く来てほしかったがな」
「後で僕等の人型の戦闘履歴見せるから、文句はその後で言ってくれると嬉しいかな?」
 結構、きつい物言いになってしまったのに気付きつつ、でも抑えられなかった。
 昨日も戦闘したばっかりでその後に機体を洗浄してほんの少しだが損傷した装甲を修理して整備して火気を中心とする物資を補給してたらすっかり朝になって、ちょっと仮眠しようとしていたらココで戦闘があるという情報が入ってそのままここにやってきたのだ。

 文句を言われるほど、努力も苦労もしていないわけじゃない。
 化け物のような噂の元になっている行為だって、裏にある地道な活動によって支えられて成立しているのだ。決して綺麗事ではない。ましてや奇跡じゃない。

 元居た隊を離れて約一ヶ月。
 いろいろな意味で、『関東軍直属・独立支援型人型機部隊』は伝説を重ね、苦労も重ねているのだった。
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