結果

文字数 1,386文字

 黄色の人型との戦闘訓練以降、中部軍との関係は明らかに悪化した。
 とりあえずその前に必要な物資全て入手出来ていたのは不幸中の幸いだった、とは、訓練後に針の筵状態の人間関係で奔走した古谷の台詞である。

 訓練前に申請していたものは全部手元にあったし、その他の必要な物もどうにか入手は出来ていた。
 こんな状況を想定していた訳ではなかったのだが。

 交渉の場においていつもなら効果の高い容姿ですら武器にならなくなった中部軍本部から出ていくまでの間、どうにか降格は回避するという善戦を果たした。
 管轄が違うとはいえ、あまりに酷い何かがあれば当然に降格はあり得る。
 別に降格自体を嫌だと思っている訳ではない。地位にはそこまでこだわりないのは、古谷も青薔薇姫も同じである。

 が、今回の件に関しては「自分たちが悪い」という結果としてのそれを許す訳にはいかなかった。
 例え結果的に誰かを傷つけたとしても、その結果を受け入れてしまえば記録上、問題が自分たちの側にあったという事になる。それは流石に認められない。

 あれこれとおかしい部分があるのは中部軍の方なのだから。

 奔走の結果、二人は特に何も処分を受けない事になった。
 元々は中部軍の方から申請をしていた訓練であること、二人が関東軍直轄で青薔薇姫の背後には予想以上の大物が控えていたらしいこと、が功を奏したらしい。
 古谷には責任追及をかわされ続けるも、これは関東軍との賠償問題だと喚いていた中部軍の上層部の一部が、通信で関東軍に怒鳴り込んだが綺麗に返り討ちにあったらしい……事を古谷は関東軍からの連絡で知った。

 あくまで結果報告としての連絡で、古谷たちの行為に関しては何の言及もない。
 今後については「今まで通りで良い」とだけ。
 何も処分する気は無いと暗に伝えられる事で、この件は終わった。

 かろうじてらしいが、向日葵姫が一命を取り留めていたのも、よかった。

 結局会う機会は無かったが……起こったことを考えれば、それは当然だろう。

 そして、二人はその街を後にする。
 本当ならば名古屋にもう少し滞在して色々調べたい所だったのだが、問題を起こす前から関東軍である二人に対する内部の情報規制が思いのほか厳しく、欲しい情報が手に入らない。
 それどころか、主力任務である戦場支援の為の、近辺の戦線情報すら常に隠されるという状態だった。
 そもそも軍人が多く住んでいるのに、おかしいくらい名古屋には召集の合図が掛からない。まるで戦闘などどこでも起こってないかのように、戦線の発生の情報が中部軍の中に来ない状態だった。
 本部にいる間、一度も出撃をする機会がなかったのは、情報を盗んですら出撃情報が無かったせいだ。

 それが単に平和だから、というならば向日葵姫の件が説明つかない。
 あれ程までに個人を冒涜する方法を取るからには、それが必要な状態があるはずで。

 これなら外に出でて情報収集する方が早い。
 古谷の結論に、青薔薇姫も同意した。
 それに、我々の人型にはかなり酷い怪我をさせてしまった。こやつの療養と回復の為には、こんな場所にいるより湯治に行くのが最善だと思うのだが、とは青薔薇姫の台詞。
 何も知らなければ馬鹿馬鹿しい発言だったが、その効果を知る古谷は全面的に同意する以外の答えはない。

 そして訪れた、湯の山温泉。
 そこで彼らは欲しかった答えを手にいれる。
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