第82話

文字数 1,213文字

柄澤は総理として自分に都合の良い案を出した。田代は官僚に説明するために資料を作ることになった。その内容を列記する。
・一夫多妻制枠の創設
・中絶禁止制度
・扶養者がいない子供の保護を目的とする政府による子供の買取制度
・国民代表による養子縁組制度
以上の制度は、人口減少に歯止めをかけるための止むを得ない政策であり、この制度により人口増、次世代の育成を可能とし、移民などに頼らず、国家の運営を行うことができる。また、この運営はお金ではなく、この制度に対する国民の評価によって運営する。なお、この法案に反対するということは、救うべき命を抹殺しようとする殺人示唆の犯罪者として国家は判断し、それを罰する権限を持つ。
田代は、柄澤が行った事を列記していく途中で気分が悪くなってきた。この独裁者による都合の良い思想は悪趣味すぎる。自分を評価する人だけを増やして、絶対的な権力を手中に収めようとする魂胆が丸見えだ。これを法案とするとして、なんて法律になるんだろうか?まあ、描いてある通りになるし、ここまでしないと人口減少が厳しい局面を迎えていることも理解している。新聞社、テレビなどの反政府的な記事を書くことを生業にしているマスコミも購読者、視聴者がすごい勢いで減って困っているから、人口を増やす法案に対して反対はできないだろう。いや、すべて企業が人口減で、非効率から不利益に変わる世の中を実感じている。人が減ると、今までやってきたことが全て無駄になるし、成り立たなくなる。だからって、結婚を進めたり、子供を増やせとか言うと問題発言として扱われる。だったら、死んでいく運命の命を救ったり、余裕がある人が子供を増やして養うのであれば、それは歓迎するべき逃げ道となる。
田代は気分は悪いが、これが、行き詰まった人口減の日本にとっては救いになるような気がした。しかし、柄澤が増殖すると思うと、あんな身勝手で、承認欲求が高いだけの変態の分身が無限に増えると思うとゾッとする。しかし、残るのは強いものだけなのだ。弱いものは消えていくばかりなのだ。それは自然なことに違いない。強い支配者に対して、弱い者は従うだけなのだ。今まで柄澤について働いていたのは、つまり、そういうことなのだと田代は諦めた。

柄澤は絶対的な評価される存在、ナイスマンになることを誓う。そのためなら何だってすると決心する。手始めにすることは、とにかく評価を集めないといけない。みんなが揃って「いいね」と言えば、なんとなく「いいね」が増えていく。それと同時に「いいね」の畑を作らないといけない。「いいね」と評価するのは人間だ。ナイスマンのみを評価する人をドンドン増やしていかなくてはならない。ナイスマンを「いいね」と思うのが、普通の考えになるように持っていく必要がある。そのためには教育が必要だ。今いる連中は、それを飲み込んだふりをするだけで、洗脳することはできないが、これからの世代には可能だ。
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