第80話

文字数 1,027文字

柄澤は田代の方に手を伸ばす。田代は避けようとしたが、歩幅を詰められ、後退した先に大きなソファが待っていた。田代は押しのけられるようにソファーの上に転がった。見上げる柄澤はシャツのボタンを外す前にベルトをカチャカチャと鳴らしながらズボンとパンツを一緒に脱いだ。シャツだけの下半身裸の柄澤がソファに横たわる自分に迫ってくる。しかも柄澤のそれはそそり勃っている。
「ちょっと、なんのつもりですか!」
田代は声を荒たげる。柄澤は不敵の笑みを浮かべて、脱ぎきってないズボンのためにヨチヨチ歩きでそそり勃ったモノを左右に揺らしながら近づいてくる。
田代は反射的に腹が立った。
田代は起き上がると、柄澤の上半身、シャツで体が包まれた部分を押し退けた。足がズボンに絡まったままの柄澤は立っていることができなくて、両手を大きく振りながら無様に倒れ込む。
「なにするんだ!」
「そっちこそどういうつもりですか!」
倒れ込んだ柄澤は素足をまっすぐ揃えて、ズボンを脱ごうとしたが、
「それ、逆!上げて!」
の田代の声に、仕方がないようにノロノロと従う。
「田代は、俺にとって身近じゃないか?だから、セックスをすることで、もっと身近な存在になろうとしたんだ。肉体関係を持ち、俺の子供を宿したら、家族じゃないか。」
田代は寒気がした。このバカは何を言っているのだろう?ヤケクソの強姦なのだろうか?やったらからって家族になれるか?なれるわけがない!
「総理大臣だって、強姦罪は通用しますから!訴える!」
「田代、君は何年俺の世話をしてきた?理解できないのか?絶対的な裏切りのない評価ってなんだと思う?」
「何言っているんですか?セックスしたら評価が上がるなんてことはないですよ!」
「そうじゃない。もっと先を考えるんだ。今、日本の人口はものすごい勢いで減ってるよね。それは理解できてる?」
「はい、結婚する人が減ったし、子供も沢山産む人も居なくなりました。それに、人口比率が多い高齢者が減少局面を迎えています。」
柄澤は、ズボンを履いて落ち着いてベルトを締めた。そして田代の隣に座った。田代も服を着た柄澤に冷静さを感じて、自分も落ち着きを取り戻した。
「人口が減るということは、評価をする人が減るってことだよね?」
「まあ、そうですね。」
「だとすると、評価の相対数も下がる。相対数が下がるということは、根強い評価者がいれば、一定数の評価者がいれば、安定した人気を保てるということだ。つまり、支配しやすくなるということだ。」
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