第78話
文字数 798文字
突然、ひめにゃんあいさつが響き渡る。でも女の子の声ではない。ステージによじ登るひめにゃんコスプレの二人組。一人がマイクを取り声を絞る。
「私が本物のひめにゃんです!よろしくね!」
コスプレは安っぽく、輝きもなかった。それに、どうやら中学生ぐらいの男のようだ。声変わりしきれてないひしゃげた声で自分のことをひめにゃんと言う。観客は注目しているが、評価はしてない。憎悪のような視線を送る。しかし、ひめにゃんと主張する沢田賢治は、見渡す限り人で埋め尽くされた観客席を見渡して、自分が特別な存在にとうとうなったと心が弾んでいた。でも、歌なんて歌ったことがないので、手を振るぐらいしか出来なかった。観客席からはざわめきと、怒号のような声が響く。怒りの男の声がしたところで、もう一人のコスプレした年増の女が声をあげる
「はーくいーん!ひめにゃんのお姉ちゃんだよ!」
設定にないキャラクターは偽物である事を主張することしか出来ない。なんだ、あのババア?ひめにゃんみたいな格好しやがって!
「おい、ひめにゃんに代われよ!チェンジだ!」
八千人の観客の前でチェンジを言い渡された沢田綾子は、ごっそりと大事なものを壊された。しかし、綾子は負けてない。チェンジされても居座る。この光り輝くステージから離れたくないからだ。せっかく手に入れた特別な場所を手放すつもりはない。
「若草さん、大丈夫?」
寧は泣きながら血塗れで倒れている若草に寄り添った。若草は失血と痛みと痺れで意識が途切れそうだが、涙を流す寧を励まそうと笑顔を作る。
「寧ちゃん、このステージ見てみろよ、綺麗なハリボテだろ?ハリボテほど、俺を惹きつけるものはないよ。だって、外はピカピカの上出来で、中身は空っぽなんだ。俺は、ハリボテになりたかったんだ。成れたかな?」
「若草さんは、立派なハリボテでしたよ。」
「中身がないハリボテか、やっぱり、それ、やだな・・・」
「私が本物のひめにゃんです!よろしくね!」
コスプレは安っぽく、輝きもなかった。それに、どうやら中学生ぐらいの男のようだ。声変わりしきれてないひしゃげた声で自分のことをひめにゃんと言う。観客は注目しているが、評価はしてない。憎悪のような視線を送る。しかし、ひめにゃんと主張する沢田賢治は、見渡す限り人で埋め尽くされた観客席を見渡して、自分が特別な存在にとうとうなったと心が弾んでいた。でも、歌なんて歌ったことがないので、手を振るぐらいしか出来なかった。観客席からはざわめきと、怒号のような声が響く。怒りの男の声がしたところで、もう一人のコスプレした年増の女が声をあげる
「はーくいーん!ひめにゃんのお姉ちゃんだよ!」
設定にないキャラクターは偽物である事を主張することしか出来ない。なんだ、あのババア?ひめにゃんみたいな格好しやがって!
「おい、ひめにゃんに代われよ!チェンジだ!」
八千人の観客の前でチェンジを言い渡された沢田綾子は、ごっそりと大事なものを壊された。しかし、綾子は負けてない。チェンジされても居座る。この光り輝くステージから離れたくないからだ。せっかく手に入れた特別な場所を手放すつもりはない。
「若草さん、大丈夫?」
寧は泣きながら血塗れで倒れている若草に寄り添った。若草は失血と痛みと痺れで意識が途切れそうだが、涙を流す寧を励まそうと笑顔を作る。
「寧ちゃん、このステージ見てみろよ、綺麗なハリボテだろ?ハリボテほど、俺を惹きつけるものはないよ。だって、外はピカピカの上出来で、中身は空っぽなんだ。俺は、ハリボテになりたかったんだ。成れたかな?」
「若草さんは、立派なハリボテでしたよ。」
「中身がないハリボテか、やっぱり、それ、やだな・・・」