16、不吉な訪問者
文字数 3,835文字
やけにカチカチとやかましく聞こえる壁時計の秒針。数分ごとに僕はそれを
睨むように見上げた。ぬるくなった牛乳に氷をいくつもグラスに入れて一気飲みする。
ふと、静寂を壊すようにインターホンが鳴った。
すぐには応答せず、様子を見ようとしたが、相手は謙虚な姿勢を見せず何度も何度もインターホンを鳴らす。
ため息をつきながら玄関へと赴き、扉をそっと押し開けた。
「ハロー。また会ったね」
絶対にこの瞬間、目の前に出現するはずもない人間がそこに立っていた。
沸騰しかけていた怒りが別の感情によってかき消される。
テロッとした素材のサーモンピンクの半袖シャツにジーパン姿の少年。
家に入ることを許可していないが、彼は図々しくも靴を脱いで部屋に上がろうとしている。
「何かご用ですか?」
彼は、ニッと不敵な笑みを漏らす。
「まさか、病院で個人情報を手に入れたんですか?」
「まーさーかー。ユーノーマイシスター」
「ふざけないでください。住居侵入罪で訴えますよ!」
回り込んで彼の行く手を阻む。背の高さでは負けていたが、口論になろうと、殴り合いになろうと引き下がるつもりはなかった。
「ちょっとちょっと、怖い顔しないでー」
金髪の男は両手を挙げて、とことんふざけたリアクションをとる。
「ちゃんと名乗るさっ。マイネームイズビーネオーガ。変わってる名前だからすぐに覚えられるっしょ?」
オーガが黄賀に変換されるまでに時間がかかった。
ハッと顔を上げて彼を凝視する。
---双子の兄だ。半年前に交換留学でカナダへ行っていたのだが、戻ってきたのだよ
エリカの言葉に怯える裏生徒会メンバーが脳裏をよぎる。
「あ、黄賀悪魔って言われてる、エリカのお兄さん?」
つい、口が滑ってしまった。
「ひっどいなー。エリカが言ったのぉ? まぁ、いいけどねー。それより、お兄さん、このビーネに嘘ついたよねー? 笑う」
もう二度と関わることもないだろうと思い、病院でその場しのぎの嘘を突いたことが悔やまれる。さらに面倒な事態を誘発するのは目に見えていたので、ここは素直に謝った。
「いいよーべつに。でもオレには感謝した方が良いと思うよー」
「え?」
「まぁ、とりあえず外も暑かったし喉も乾いてるから? アイスティーとかもらえる?」
断っても彼は居座るだろう。
キツネザビが来るまでの暇つぶしとして、この場は腹をくくった。
いや、あわよくば鉢合わせとなり、いかにも素行が悪そうな黄賀ビーネにキツネザビの関心が向かうかもしれない。そうなれば、不幸中の幸い。
ひとまず、キッチンへ向かった。
アイスティーは作り置きしていないので、キッチンの棚からわざわざ未開封のティーパックの箱を開封。用意する間も、僕は黄賀ビーネの動向を目の端でチェックすることを怠らない。どことなく尖ったナイフのような危うさが常に漂っているのだから。
アイスティーを目の前に置くと、リビングをぐるっと見回していた彼がはたと僕を見て口角を上げた。それから、グラスに口をつけてふた口ほど飲んだ。
ハーフなのか、瞳はブルーとグリーンを混ぜたような色合い。眉毛の薄い色も地毛と見ると、髪も脱色しているわけではなさそうだ。
細く長い脚を組んでアイスティーを飲む姿をまじまじと見て思ったのが、エリカとは髪の色、鼻の形、首の長さ、足の長さが似ているということ。彼はシークレットブーツを履いてはいなかったとは思うが。
「そうそう、結論から言うとねっ、ティーチャーは来ないよ?」
僕は眉間にしわを寄せた。
「なんでここへ来ることを知ってる?」
フッと薄ら笑いを浮かべ、彼はグラスをテーブルに置いた。
ぐっと僕に顔を近づけてくる。ふわっと薔薇のような香りが鼻をかすめる。
「始末したからさ」
「始末?」
訊き返す声は掠れていた。
「そう、殺処分。だってぇー。とんでもない悪党だったろう? 丹司お兄さんだって被害者じゃない? オレ、知ってるんだよねー。ひどい話だよね? マジ笑う。学級裁判って言いながらクラスメイト不在ってさー」
黄賀エリカの双子の兄は、果たして僕にとって味方なのか、それとも敵となるのか。
彼は、この事態を純粋に楽しんでいるようにも見える。
「ビーネさんが、本当に殺したんですか?」
今一度、大事な部分を再確認する。
「うん。俺は丹司お兄さんとは違って嘘はつかないからね」
皮肉交じりに言い終えてから、残りのアイスティーを一気に飲み込んだ。
「リフィル・プリーズ? まだまだお話しなきゃだし。喉が乾くといけないよねー」
握りしめたグラスを僕の頬に押し付けてきた。
言われた通りアイスティーのおかわりを注いだ。
果物を何か入れて欲しいとせがまれ、缶詰のさくらんぼを開けてひとつ取り出し、グラスに入れて渡した。面倒ではあったが、僕自身も彼から聞き出したいことは山ほどあったので我慢。
「これからとっても怖い話をするから、もうだめーって思ったら、手を挙げてね」
その前置きの通り、黄賀ビーネは笑顔とは対照的に背筋が凍るほどの恐怖の実話を滔々(とうとう)と語り始めた。
「岡林も、丹司お兄さんと同じで、ヨソモノなんだよー。実家は北海道って言ってたかな? 捨て子らしくて親はいないんだってー。でも、狡猾でメンタル強いからねー、噂を聞きつけてこの町へやって来た。オレ、この町で生まれたけど、エリカと違って子供の頃はニュージーランドにいたからさー。居心地悪いんだよねー。あ、エリカとオレは腹違いの子なんだよぉ? って、脱線しちゃったー。岡林はこの町で工場の清掃係として働き始めたんだ。でも、ただの清掃係じゃなーいよっ? メバチ団地って知ってる?」
工藤乃瑛琉が住んでいる団地だ。
僕は表情を硬くしながらうなづいた。
「あそこってさ、墓場って言われてるんだよね。何でかって言うと、人権が存在しないんだよねぇ。過酷な労働を強いられたり、汚れ作業をさせられるんだ。だから、死んでいるひとばっかり住んでるのよ! 刑務所上がりの罪人もちらほら、ね。もともと岡林もそこで数人の清掃員たちと同居してたわけ。いわゆる、住み込みってやつ?」
「清掃係って、死体を埋めたりとかか?」
待っていられずに答えを急かすと、黄賀ビーネは「焦らない焦らない」と笑った。
もったいぶるように、さくらんぼの柄をつまみながらアイスティーをゆっくりとかき混ぜている。
「この町を牛耳ってるのが誰か知ってるか?」
「知らない」
即答した。
「相沢辰(あいざわしん)と、帝王貝細工だよ。どちらかは聞いたことあるだろう?」
「同じクラスメイトの相沢の親族?」
「そうそう、父親のシャッチョさんね」
あのインタビュー記事を読んでいたので理解が早まった。
「帝王貝細工っていうのは、神主さんだよね?」
「女蜂神社のねー。で、その相沢辰が経営する相沢筆工房が彼らを雇っているんだよぉ。そこで目覚ましい出世を遂げたのが岡林だー。笑う。失うものがない者は強いよねーやっぱ。シャッチョさんも何でも言うことをきく岡林を可愛がった。でね、会社としても貴重な素材を絶やさず手に入れたいわけ? そのシステムを構築するため、強固なものにするため、学校という場所を利用することにしたってわけなのー。だから、暗黒な学校なのは当然のことなんだよー」
思わず絶句。
まさか芽八中学を裏で操っていたのが、相沢の父親だったとは……。
「イイこと教えてあげちゃう。だから、このさくらんぼ食べてくれる?」
ぞわっと鳥肌がたった。
「岡林を処分してあげたんだよ? さくらんぼくらい、食べてくれるよね?」
ビーネのウィンクが飛んできた。
「に、苦手なら、残してくれて構わないよ」
「別にぃー。丹司お兄さんは、苦手なのかーい?」
さくらんぼではなく、人の心の裏まで見透かしたようなブルーグリーンのおまえの瞳が苦手だ。本人を前に思ったことが言えるならどんなに楽だろうか。
渋々彼の手からアイスティー漬けになっていたさくらんぼを受け取った。細いあごで「食え」と煽る。さくらんぼは甘かったが、その味覚を堪能する暇もなく彼が一言。
「でもね、その二大権力もちょっと前の話なんだよね。新たな勢力が右から、左から。面白くなるよ」
そこで黄賀ビーネは、すっと立ち上がった。家に来た時に感じた薄気味悪さとはまた異質の不安を残して。
ソファーの座面の中央に視線を置いたまま、その言葉に含まれた意味を読み解こうと思ったが、さらに言葉を被せてきた。
「オレは『革命児』の方に興味がある。だから、個人的に丹司お兄さんのことは応援しているんだよ? でも、無茶しすぎると死ぬからね。この町に殺されちゃうからね。そうなったら、オレは泣かないけど、たぶん妹が悲しむと思うから慎重に頼むね。何はともあれ、高みの見物とさせてもらうよっ。丹司お兄さん、グッドラック!」
黄賀ビーネが家を去ったあと、教師の岡林が訪問に来ることはなかった。
葬られたのはおそらく事実なのだろう。
しばらくは、黄賀ビーネの体重で凹んでしわができた座面を見つめたまま、この町の権力者たちの顔を思い浮かべていた。
睨むように見上げた。ぬるくなった牛乳に氷をいくつもグラスに入れて一気飲みする。
ふと、静寂を壊すようにインターホンが鳴った。
すぐには応答せず、様子を見ようとしたが、相手は謙虚な姿勢を見せず何度も何度もインターホンを鳴らす。
ため息をつきながら玄関へと赴き、扉をそっと押し開けた。
「ハロー。また会ったね」
絶対にこの瞬間、目の前に出現するはずもない人間がそこに立っていた。
沸騰しかけていた怒りが別の感情によってかき消される。
テロッとした素材のサーモンピンクの半袖シャツにジーパン姿の少年。
家に入ることを許可していないが、彼は図々しくも靴を脱いで部屋に上がろうとしている。
「何かご用ですか?」
彼は、ニッと不敵な笑みを漏らす。
「まさか、病院で個人情報を手に入れたんですか?」
「まーさーかー。ユーノーマイシスター」
「ふざけないでください。住居侵入罪で訴えますよ!」
回り込んで彼の行く手を阻む。背の高さでは負けていたが、口論になろうと、殴り合いになろうと引き下がるつもりはなかった。
「ちょっとちょっと、怖い顔しないでー」
金髪の男は両手を挙げて、とことんふざけたリアクションをとる。
「ちゃんと名乗るさっ。マイネームイズビーネオーガ。変わってる名前だからすぐに覚えられるっしょ?」
オーガが黄賀に変換されるまでに時間がかかった。
ハッと顔を上げて彼を凝視する。
---双子の兄だ。半年前に交換留学でカナダへ行っていたのだが、戻ってきたのだよ
エリカの言葉に怯える裏生徒会メンバーが脳裏をよぎる。
「あ、黄賀悪魔って言われてる、エリカのお兄さん?」
つい、口が滑ってしまった。
「ひっどいなー。エリカが言ったのぉ? まぁ、いいけどねー。それより、お兄さん、このビーネに嘘ついたよねー? 笑う」
もう二度と関わることもないだろうと思い、病院でその場しのぎの嘘を突いたことが悔やまれる。さらに面倒な事態を誘発するのは目に見えていたので、ここは素直に謝った。
「いいよーべつに。でもオレには感謝した方が良いと思うよー」
「え?」
「まぁ、とりあえず外も暑かったし喉も乾いてるから? アイスティーとかもらえる?」
断っても彼は居座るだろう。
キツネザビが来るまでの暇つぶしとして、この場は腹をくくった。
いや、あわよくば鉢合わせとなり、いかにも素行が悪そうな黄賀ビーネにキツネザビの関心が向かうかもしれない。そうなれば、不幸中の幸い。
ひとまず、キッチンへ向かった。
アイスティーは作り置きしていないので、キッチンの棚からわざわざ未開封のティーパックの箱を開封。用意する間も、僕は黄賀ビーネの動向を目の端でチェックすることを怠らない。どことなく尖ったナイフのような危うさが常に漂っているのだから。
アイスティーを目の前に置くと、リビングをぐるっと見回していた彼がはたと僕を見て口角を上げた。それから、グラスに口をつけてふた口ほど飲んだ。
ハーフなのか、瞳はブルーとグリーンを混ぜたような色合い。眉毛の薄い色も地毛と見ると、髪も脱色しているわけではなさそうだ。
細く長い脚を組んでアイスティーを飲む姿をまじまじと見て思ったのが、エリカとは髪の色、鼻の形、首の長さ、足の長さが似ているということ。彼はシークレットブーツを履いてはいなかったとは思うが。
「そうそう、結論から言うとねっ、ティーチャーは来ないよ?」
僕は眉間にしわを寄せた。
「なんでここへ来ることを知ってる?」
フッと薄ら笑いを浮かべ、彼はグラスをテーブルに置いた。
ぐっと僕に顔を近づけてくる。ふわっと薔薇のような香りが鼻をかすめる。
「始末したからさ」
「始末?」
訊き返す声は掠れていた。
「そう、殺処分。だってぇー。とんでもない悪党だったろう? 丹司お兄さんだって被害者じゃない? オレ、知ってるんだよねー。ひどい話だよね? マジ笑う。学級裁判って言いながらクラスメイト不在ってさー」
黄賀エリカの双子の兄は、果たして僕にとって味方なのか、それとも敵となるのか。
彼は、この事態を純粋に楽しんでいるようにも見える。
「ビーネさんが、本当に殺したんですか?」
今一度、大事な部分を再確認する。
「うん。俺は丹司お兄さんとは違って嘘はつかないからね」
皮肉交じりに言い終えてから、残りのアイスティーを一気に飲み込んだ。
「リフィル・プリーズ? まだまだお話しなきゃだし。喉が乾くといけないよねー」
握りしめたグラスを僕の頬に押し付けてきた。
言われた通りアイスティーのおかわりを注いだ。
果物を何か入れて欲しいとせがまれ、缶詰のさくらんぼを開けてひとつ取り出し、グラスに入れて渡した。面倒ではあったが、僕自身も彼から聞き出したいことは山ほどあったので我慢。
「これからとっても怖い話をするから、もうだめーって思ったら、手を挙げてね」
その前置きの通り、黄賀ビーネは笑顔とは対照的に背筋が凍るほどの恐怖の実話を滔々(とうとう)と語り始めた。
「岡林も、丹司お兄さんと同じで、ヨソモノなんだよー。実家は北海道って言ってたかな? 捨て子らしくて親はいないんだってー。でも、狡猾でメンタル強いからねー、噂を聞きつけてこの町へやって来た。オレ、この町で生まれたけど、エリカと違って子供の頃はニュージーランドにいたからさー。居心地悪いんだよねー。あ、エリカとオレは腹違いの子なんだよぉ? って、脱線しちゃったー。岡林はこの町で工場の清掃係として働き始めたんだ。でも、ただの清掃係じゃなーいよっ? メバチ団地って知ってる?」
工藤乃瑛琉が住んでいる団地だ。
僕は表情を硬くしながらうなづいた。
「あそこってさ、墓場って言われてるんだよね。何でかって言うと、人権が存在しないんだよねぇ。過酷な労働を強いられたり、汚れ作業をさせられるんだ。だから、死んでいるひとばっかり住んでるのよ! 刑務所上がりの罪人もちらほら、ね。もともと岡林もそこで数人の清掃員たちと同居してたわけ。いわゆる、住み込みってやつ?」
「清掃係って、死体を埋めたりとかか?」
待っていられずに答えを急かすと、黄賀ビーネは「焦らない焦らない」と笑った。
もったいぶるように、さくらんぼの柄をつまみながらアイスティーをゆっくりとかき混ぜている。
「この町を牛耳ってるのが誰か知ってるか?」
「知らない」
即答した。
「相沢辰(あいざわしん)と、帝王貝細工だよ。どちらかは聞いたことあるだろう?」
「同じクラスメイトの相沢の親族?」
「そうそう、父親のシャッチョさんね」
あのインタビュー記事を読んでいたので理解が早まった。
「帝王貝細工っていうのは、神主さんだよね?」
「女蜂神社のねー。で、その相沢辰が経営する相沢筆工房が彼らを雇っているんだよぉ。そこで目覚ましい出世を遂げたのが岡林だー。笑う。失うものがない者は強いよねーやっぱ。シャッチョさんも何でも言うことをきく岡林を可愛がった。でね、会社としても貴重な素材を絶やさず手に入れたいわけ? そのシステムを構築するため、強固なものにするため、学校という場所を利用することにしたってわけなのー。だから、暗黒な学校なのは当然のことなんだよー」
思わず絶句。
まさか芽八中学を裏で操っていたのが、相沢の父親だったとは……。
「イイこと教えてあげちゃう。だから、このさくらんぼ食べてくれる?」
ぞわっと鳥肌がたった。
「岡林を処分してあげたんだよ? さくらんぼくらい、食べてくれるよね?」
ビーネのウィンクが飛んできた。
「に、苦手なら、残してくれて構わないよ」
「別にぃー。丹司お兄さんは、苦手なのかーい?」
さくらんぼではなく、人の心の裏まで見透かしたようなブルーグリーンのおまえの瞳が苦手だ。本人を前に思ったことが言えるならどんなに楽だろうか。
渋々彼の手からアイスティー漬けになっていたさくらんぼを受け取った。細いあごで「食え」と煽る。さくらんぼは甘かったが、その味覚を堪能する暇もなく彼が一言。
「でもね、その二大権力もちょっと前の話なんだよね。新たな勢力が右から、左から。面白くなるよ」
そこで黄賀ビーネは、すっと立ち上がった。家に来た時に感じた薄気味悪さとはまた異質の不安を残して。
ソファーの座面の中央に視線を置いたまま、その言葉に含まれた意味を読み解こうと思ったが、さらに言葉を被せてきた。
「オレは『革命児』の方に興味がある。だから、個人的に丹司お兄さんのことは応援しているんだよ? でも、無茶しすぎると死ぬからね。この町に殺されちゃうからね。そうなったら、オレは泣かないけど、たぶん妹が悲しむと思うから慎重に頼むね。何はともあれ、高みの見物とさせてもらうよっ。丹司お兄さん、グッドラック!」
黄賀ビーネが家を去ったあと、教師の岡林が訪問に来ることはなかった。
葬られたのはおそらく事実なのだろう。
しばらくは、黄賀ビーネの体重で凹んでしわができた座面を見つめたまま、この町の権力者たちの顔を思い浮かべていた。