4、女帝リスト

文字数 1,338文字

 今か今かと、看護師たちが見回りに来るのを待っている間、母が持ってきた荷物の中から適当な暇つぶしを見つけた。
もはやそれは、忘却の果てにあった兵頭お手製の女帝リスト。表紙の絵は鉛筆で描かれたイラスト。制服姿の女子三人のシルエットと、空いたスペースに芽八中学の校章のデザインが描かれている。
 今見ると、シルエットがそれぞれ誰を指しているのか一目瞭然だった。左から工藤乃瑛琉、黄賀エリカ、右京ほたる。
さらに発見だったのは、表紙の右下に小さく「画:noel」と書かれていたこと。彼女の意外な特技を知って、またしげしげと表紙を眺める。
右開きの冊子を開くと、簡単な目次があった。一ページ目から順に読むことにする。

 【女帝リストNo.1 黄賀エリカ(第一類医薬女)】
・言わずと知れた生徒会長
・努力家
・芽八一のPCショップ『黄昏』の経営者(母親が店番をしているらしい)
・リケジョ
・恋の噂がなさ過ぎてレズ疑惑あり
・料理が得意
・胸も身長(155センチ)もあまりないが魅力的なキャットアイズでカバー
・例大祭に命をかけている
◆効能:滋養強壮
◆副作用:低血圧症

 【女帝リストNo.2 工藤乃瑛琉(第二類医薬女)】
・とにかく闇が深い
・テストの答案をすべてイラストで提出したことがあるらしい
・乃瑛琉というキラキラネームをつけたのは、母親の不倫相手らしい
・甘いものに目がない
・持病?あり
・巨乳巨乳巨乳(推定Eカップ)の妹系
・商店街で着ぐるみのバイトをしていたことがあるらしい
・猫と話せるらしい
◆効能:自然調和
◆副作用:虚弱体質

 【女帝リストNo.3 右京ほたる(第三類医薬女)】
・母親も巫女で噂によるとクリソツとか
・他人にあまり興味を持たないクールビューティー
・165センチで中性的な顔立ちだが胸は意外とある(会長よりはある)
・日本舞踊を習っていたことがあり、踊るのが好きらしい
・大人と行動することが多いものの、同性から慕われている印象
・信仰心があつい
・綺麗好き
・俗世に疎い
◆効能:集中力増進
◆副作用:感情希薄

 とうに知っていることもあれば、この冊子で初めて知る情報もあり。
 しかし、PCショップ『黄昏』が、まさか生徒会長の店だったとは……それも、彼女が経営者だって?
 出会った時から、どこかぶっ飛んでいる印象は否めなかったが、まさかそれほど多才だとは思わなかった。
 それにしても、名前の後ろに書かれている聞き慣れない言葉が引っかかった。
 第一類医薬女とは?
 第一類医薬品の間違いではないのか。
 兵頭のことだ。誤変換の可能性は大いにある。
 仮にそうだとしても、何を示すものかまでは読み取れない。
 効能や副作用といった表記にも疑問しか残らない。
 とにかくツッコミどころ満載の女帝リストだったが、看護師が見回りに来てしまった。
 ここに書かれている通り、生徒会長は例大祭に命を懸けている女だ。
 約束を守らなければ後が面倒に決まっている。
 荷物の中に入っていた蒸しタオルで全身を拭いたり新しい肌着に着替えたり(院内でのシャワーは毎日は入れない)、一応は身だしなみを整えたのちベッドを下りた。
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登場人物紹介

◆鬼月丹司


芽八市に引っ越してきた中学二年生。

PCと散歩が趣味。

大らかで誰とでも打ち解ける性格。


◆美星

(イラスト/ちすお様)


丹司が家の近所で出会った浴衣姿の

ミステリアスな少女。

猫のグージーと暮らしている。

人目を極端に避けようとする。

◆グージー

(イラスト/高橋直樹様)


美星といつもいるキジ白猫。

◆黄賀エリカ

(イラスト/ちすお様)


生徒会長。身長と胸のサイズを気にしている。

昼間は屍のように机に突っ伏しているが、

放課後になると、生徒会の仕事に活発に取り組む。

美麗な容姿に似合わず男っぽい口調。


◆右京ほたる

(イラスト/ちすお様)


本業は巫女。

冷静沈着で、積極的に人とかかわりを持たない。

冷ややかな口調だが、けっして不機嫌なわけでない。


◆工藤乃瑛琉

(イラスト/ちすお様)


童顔の容姿に似合わずグラマラス。

ふわふわとした物言いで、

心を読み取りづらい。

虚弱体質で不登校がちのようだが・・・。

◆兵頭新之助


裏生徒会長。

当初は丹司に対して高圧的な態度で

接していたが、丹司のあっけらかんとした

性格に気圧され、徐々に仲を深めてゆく。

実は、仲間思い。


◆相沢真澄


裏生徒会メンバーのひとり。

理知的で物静かだが、

意見はハッキリと口にする。

親が町一番の金持ち。

◆石井悠善


通称石井ちゃん。

裏生徒会メンバーのひとり。

兵頭を心酔し、腰ぎんちゃくのように

兵頭と行動を共にする。


◆マサヤ伯父さん


市街に住む丹司の伯父。

中学の技術の先生。

仕事にのめり込む丹司の父を心配する。

◆キツネザビ


担任の先生。

口が悪く特に転校生の丹司に

冷たい態度をとる。

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