16、中古PCに残された記録

文字数 963文字

 その夜、買ってきた中古の外付けハードディスクをすぐノートPCに繋いでみた。
 すぐさまダウンロードしてあるものを移そうと空のはずのディスクを開くと、意外にもそこにはデータが大量に保存されたままだった。すぐに削除すれば良かったのかもしれないが、人の覗き見根性は抑えられない。
 データを開くと二十のフォルダが保存されていた。
 フォルダ名は、97年~17年までの年数になっている。なんとなく一番古い二十年前のフォルダを開いてみた。ずらりと表示されてゆく写真の一番目に、鳥居を背に立てられた『第二十回 女蜂神社 例大祭』の幟(のぼり)が目に留まった。
 ほかに華やかな神輿や境内の写真、神職らが楽器を演奏しながらメバチ商店街を練り歩く写真、地元の子供たちが行列を眺める写真、夜店でにぎわう地元住人らの写真、当時の生徒会と思われる写真が保存されていた。
 別のフォルダを見ても、やはり例大祭当日の風景が写真に収められている。画素数は荒いがはっきりと当時の様子は伝わってきた。
 しばらく代り映えのない写真が続いたのでハードディスクを取り外そうとしたその時。心臓がとくとく高鳴った。
 鰐(わに)の面をつけた銀髪の少女を見つけたのだ。
 面を左側にずらして顔を見せている写真もある。
 薄い眉毛に冴え冴えとした白い肌。
 そして、二重の瞳は銀色のまま。茄子紺色の浴衣姿から見ても、美星に違いなかった。このほかに彼女が写っている画像はないか。
 また古いフォルダから順々に見てまわった。
 「まさか…まさか……」
 どの例大祭にも美星は『同じ姿』で写っていた。
 驚くべきことに、二十年間、容姿が変わっていないことになる。いや、自分が接触した美星はこの写真の少女の妹かもわからない。
 ある写真では白と紫の袴を着た六十代くらいの神主と向かい合って話している様子が写っていた。父親が神主という可能性もある。
 そもそも、このハードディスクの持ち主は誰か。むろんここで考えても答えは出ない。
 ひとまず、データは削除せず残しておくことにした。
 その時、携帯の着信が鳴って身が竦(すく)んだ。人のデータを勝手に見た罪で逮捕されてしまうのか。一瞬、そんなありえないことを想像。 
 手元に携帯を寄せると、マサヤ伯父さんの名が表示されていた。
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登場人物紹介

◆鬼月丹司


芽八市に引っ越してきた中学二年生。

PCと散歩が趣味。

大らかで誰とでも打ち解ける性格。


◆美星

(イラスト/ちすお様)


丹司が家の近所で出会った浴衣姿の

ミステリアスな少女。

猫のグージーと暮らしている。

人目を極端に避けようとする。

◆グージー

(イラスト/高橋直樹様)


美星といつもいるキジ白猫。

◆黄賀エリカ

(イラスト/ちすお様)


生徒会長。身長と胸のサイズを気にしている。

昼間は屍のように机に突っ伏しているが、

放課後になると、生徒会の仕事に活発に取り組む。

美麗な容姿に似合わず男っぽい口調。


◆右京ほたる

(イラスト/ちすお様)


本業は巫女。

冷静沈着で、積極的に人とかかわりを持たない。

冷ややかな口調だが、けっして不機嫌なわけでない。


◆工藤乃瑛琉

(イラスト/ちすお様)


童顔の容姿に似合わずグラマラス。

ふわふわとした物言いで、

心を読み取りづらい。

虚弱体質で不登校がちのようだが・・・。

◆兵頭新之助


裏生徒会長。

当初は丹司に対して高圧的な態度で

接していたが、丹司のあっけらかんとした

性格に気圧され、徐々に仲を深めてゆく。

実は、仲間思い。


◆相沢真澄


裏生徒会メンバーのひとり。

理知的で物静かだが、

意見はハッキリと口にする。

親が町一番の金持ち。

◆石井悠善


通称石井ちゃん。

裏生徒会メンバーのひとり。

兵頭を心酔し、腰ぎんちゃくのように

兵頭と行動を共にする。


◆マサヤ伯父さん


市街に住む丹司の伯父。

中学の技術の先生。

仕事にのめり込む丹司の父を心配する。

◆キツネザビ


担任の先生。

口が悪く特に転校生の丹司に

冷たい態度をとる。

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