3、生徒会長って元気じゃん

文字数 587文字

 下校時、廊下でふたりの女帝とすれ違った。
 右京ほたるの隣を歩いているのは、生徒会長の黄賀エリカだ。
 エリカは生徒会長と書いてあるタスキを上半身に掛け、生徒会の仕事に使うのか、ノートPCを抱えている。授業中の姿とは打って変わって、やる気に満ちあふれた表情で闊歩している。その姿がスラッとしていて、男の僕でもかっこいいと思ってしまうのだが、よくよく足元を見てみれば、厚底靴で身長を底上げしていた。
 「寄り道せずに帰れ、少年!」
 「ちゃんと、名前あるんですけどね……」
 何とも言えない挨拶に思わず苦笑する。
 初めて聞く生徒会長エリカの声は、甲高い、意外にもハキハキとしたものだったので驚いた。
 確かに生徒会長然としている。
 「忙しそうだね」
 その言葉に足を止めたエリカが、「例大祭が来る! 忙しいことはありがたい」と言い放ってきた。
 例大祭の詳細を質問しても良かったが、アイドルとへの質問は禁止ですと言わんばかりに右京ほたるがエリカの背中を押しながら一言。
 「じゃあまたね、鬼月くん」
 ふたりが目の前から消えてもなお、甘い残り香がいたずらに鼻腔をくすぐった。シャンプーの匂いなのか、それとも香水なのか。いやいや、気がかりなのはそこじゃない。
 昼休みまで生きた屍のごとく眠ってばかりだった彼女も、ようやく目覚めたということか。いまいち、掴めないタイプだ。
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登場人物紹介

◆鬼月丹司


芽八市に引っ越してきた中学二年生。

PCと散歩が趣味。

大らかで誰とでも打ち解ける性格。


◆美星

(イラスト/ちすお様)


丹司が家の近所で出会った浴衣姿の

ミステリアスな少女。

猫のグージーと暮らしている。

人目を極端に避けようとする。

◆グージー

(イラスト/高橋直樹様)


美星といつもいるキジ白猫。

◆黄賀エリカ

(イラスト/ちすお様)


生徒会長。身長と胸のサイズを気にしている。

昼間は屍のように机に突っ伏しているが、

放課後になると、生徒会の仕事に活発に取り組む。

美麗な容姿に似合わず男っぽい口調。


◆右京ほたる

(イラスト/ちすお様)


本業は巫女。

冷静沈着で、積極的に人とかかわりを持たない。

冷ややかな口調だが、けっして不機嫌なわけでない。


◆工藤乃瑛琉

(イラスト/ちすお様)


童顔の容姿に似合わずグラマラス。

ふわふわとした物言いで、

心を読み取りづらい。

虚弱体質で不登校がちのようだが・・・。

◆兵頭新之助


裏生徒会長。

当初は丹司に対して高圧的な態度で

接していたが、丹司のあっけらかんとした

性格に気圧され、徐々に仲を深めてゆく。

実は、仲間思い。


◆相沢真澄


裏生徒会メンバーのひとり。

理知的で物静かだが、

意見はハッキリと口にする。

親が町一番の金持ち。

◆石井悠善


通称石井ちゃん。

裏生徒会メンバーのひとり。

兵頭を心酔し、腰ぎんちゃくのように

兵頭と行動を共にする。


◆マサヤ伯父さん


市街に住む丹司の伯父。

中学の技術の先生。

仕事にのめり込む丹司の父を心配する。

◆キツネザビ


担任の先生。

口が悪く特に転校生の丹司に

冷たい態度をとる。

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