3、生徒会長は場所にとらわれず

文字数 595文字

 翌日、病院の食事を食べ終えた頃、ジャージ姿の黄賀エリカが見舞いにやってきた。なぜか彼女は、生徒会長と書かれたタスキを肩から掛けていた。
すでに面会時間は過ぎていたので、どうやって忍び込んできたのかを訊くと、「今朝、ぶっ倒れて、ここまでワープだ」と一言。
「何かあったの?」
 間接的に僕の命が助かったことで彼女が襲われたのかと推察したが、「いつもの貧血だ」と一蹴された。
彼女も同じ病院に入院中、ということらしい。
「それよりだ、少年! 私の部屋で例大祭の準備をするから、あとで来るのだ!」
「キミの部屋は個室なの?」
「当たり前だ。私は歩く生徒会室でもあるのだぞ? ふはははは」
「言っている意味がよく分からないけど、まぁ、ひとりでベッドに横になっていても気が滅入るだけだからね。取り敢えず、看護師さんに夜までには戻りますって伝えてくるよ」
  後頭部を指でパチンと弾かれた。
「馬鹿正直にそんなこと告げに行くやつがいるか!」
「じゃあ、バレた時どうするんだよ」
生真面目に返してみる。
「見回り後に来るのだ。わかったか? 私はB棟七階の701という部屋にいる。待ってるからな!」
 彼女が病室を出るとき、二人の看護師とすれ違った。彼女が遠ざかると、互いに顔を見合わせてくすくす笑っていた。
 やはり、生徒会長黄賀エリカはどこか憎めない。
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登場人物紹介

◆鬼月丹司


芽八市に引っ越してきた中学二年生。

PCと散歩が趣味。

大らかで誰とでも打ち解ける性格。


◆美星

(イラスト/ちすお様)


丹司が家の近所で出会った浴衣姿の

ミステリアスな少女。

猫のグージーと暮らしている。

人目を極端に避けようとする。

◆グージー

(イラスト/高橋直樹様)


美星といつもいるキジ白猫。

◆黄賀エリカ

(イラスト/ちすお様)


生徒会長。身長と胸のサイズを気にしている。

昼間は屍のように机に突っ伏しているが、

放課後になると、生徒会の仕事に活発に取り組む。

美麗な容姿に似合わず男っぽい口調。


◆右京ほたる

(イラスト/ちすお様)


本業は巫女。

冷静沈着で、積極的に人とかかわりを持たない。

冷ややかな口調だが、けっして不機嫌なわけでない。


◆工藤乃瑛琉

(イラスト/ちすお様)


童顔の容姿に似合わずグラマラス。

ふわふわとした物言いで、

心を読み取りづらい。

虚弱体質で不登校がちのようだが・・・。

◆兵頭新之助


裏生徒会長。

当初は丹司に対して高圧的な態度で

接していたが、丹司のあっけらかんとした

性格に気圧され、徐々に仲を深めてゆく。

実は、仲間思い。


◆相沢真澄


裏生徒会メンバーのひとり。

理知的で物静かだが、

意見はハッキリと口にする。

親が町一番の金持ち。

◆石井悠善


通称石井ちゃん。

裏生徒会メンバーのひとり。

兵頭を心酔し、腰ぎんちゃくのように

兵頭と行動を共にする。


◆マサヤ伯父さん


市街に住む丹司の伯父。

中学の技術の先生。

仕事にのめり込む丹司の父を心配する。

◆キツネザビ


担任の先生。

口が悪く特に転校生の丹司に

冷たい態度をとる。

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