9、夢でお願い
文字数 1,181文字
昼食も後片付けも終えた後、急に眠気が襲ってきた。誰もいないリビングのソファで、僕は深く沈み込むように眠った。
トントン トントン
カプセルのようなものを誰かが叩いている音。しかもそのカプセルに僕が入っているという奇妙な状況。
身体とカプセルが一体化しているのかもしれないし、もしかしたら僕の身体の表面がカプセルのように硬いのかもしれない。
どちらにせよ、誰かが僕のもとを訪れてきた。
トントン トントン
しかし、僕は眠ったまま応答せず。
「お願い、話し相手になって欲しいの」
げんきんなことに、愛らしい少女の声で僕はムクッと目覚める。
カプセルを内側から開ける。どうやら、カプセルが僕の身体ではないようだ。硬めの寝袋に入っていただけなのかもしれない。
カプセルの外には、鰐の面をつけた少女が胸元に手を当てて立っていた。
「あった? なにが」
その独特な口調と美声は、あの病院で出会った謎の男そのもの。
「グージーがね、何も食べてくれないの」
「みてはどうだ? ふやかして」
おかしな倒置法口調は続く。
「それでも、ダメなの……。私、あの子がいなくなったら」
「がいる、ほたる」
「ほたるは、ほたるは……」
その先は口にしなかった。
もしかすると、転校初日に僕が言われたように、 「基本私は忙しいから、生徒会長のエリカを頼ると良いわ」と冷たく返されたのかもしれない。
「グージーの食欲がない理由を知りたいの。私、ずっとグージーとは意思疎通ができていると思っていただけに、ショックで……」
ふっと、兵頭が作成した女帝リストが脳裏をよぎった。夢にまで出てくる女帝リスト。ただものではない。
工藤乃瑛琉のページが浮かび上がる。
巨乳巨乳巨乳(推定Eカップ)の妹系、ではなく、その次の次の項目に書かれてある、「猫と話せるらしい」が、ここへきて役立ちそうだった。
「話してやる、グージーと。待って欲しい。会おうまた。二日後に」
仰々しい態度でそう告げると、鰐の面を被った少女は「待ってるわ」と答えた。
そして、「一族が滅びたの。とても誇り高き一族。自分の幸福よりも、周りの人の幸福を考えて行動する。真面目な一族。でも、とても……」と、呪文のように唱えたまま姿を消した。
転寝から目覚めると、そこはリビングの天井だった。身体に張りつくようなTシャツを豪快に脱ぐ。汗の掻き方が尋常ではなかった。
手の届く場所に置いてあるリモコンを取ると、そこには冷房25度の文字が。
「そうか、そういうことか。記憶から消えていた鰐のお面の少女は夢に出てくる子だったのか」
ひとりつぶやく。しかし、ただの夢ではないだろう。その証拠に、グージーという名の猫についてはうっすらとだが記憶があったのだから。
トントン トントン
カプセルのようなものを誰かが叩いている音。しかもそのカプセルに僕が入っているという奇妙な状況。
身体とカプセルが一体化しているのかもしれないし、もしかしたら僕の身体の表面がカプセルのように硬いのかもしれない。
どちらにせよ、誰かが僕のもとを訪れてきた。
トントン トントン
しかし、僕は眠ったまま応答せず。
「お願い、話し相手になって欲しいの」
げんきんなことに、愛らしい少女の声で僕はムクッと目覚める。
カプセルを内側から開ける。どうやら、カプセルが僕の身体ではないようだ。硬めの寝袋に入っていただけなのかもしれない。
カプセルの外には、鰐の面をつけた少女が胸元に手を当てて立っていた。
「あった? なにが」
その独特な口調と美声は、あの病院で出会った謎の男そのもの。
「グージーがね、何も食べてくれないの」
「みてはどうだ? ふやかして」
おかしな倒置法口調は続く。
「それでも、ダメなの……。私、あの子がいなくなったら」
「がいる、ほたる」
「ほたるは、ほたるは……」
その先は口にしなかった。
もしかすると、転校初日に僕が言われたように、 「基本私は忙しいから、生徒会長のエリカを頼ると良いわ」と冷たく返されたのかもしれない。
「グージーの食欲がない理由を知りたいの。私、ずっとグージーとは意思疎通ができていると思っていただけに、ショックで……」
ふっと、兵頭が作成した女帝リストが脳裏をよぎった。夢にまで出てくる女帝リスト。ただものではない。
工藤乃瑛琉のページが浮かび上がる。
巨乳巨乳巨乳(推定Eカップ)の妹系、ではなく、その次の次の項目に書かれてある、「猫と話せるらしい」が、ここへきて役立ちそうだった。
「話してやる、グージーと。待って欲しい。会おうまた。二日後に」
仰々しい態度でそう告げると、鰐の面を被った少女は「待ってるわ」と答えた。
そして、「一族が滅びたの。とても誇り高き一族。自分の幸福よりも、周りの人の幸福を考えて行動する。真面目な一族。でも、とても……」と、呪文のように唱えたまま姿を消した。
転寝から目覚めると、そこはリビングの天井だった。身体に張りつくようなTシャツを豪快に脱ぐ。汗の掻き方が尋常ではなかった。
手の届く場所に置いてあるリモコンを取ると、そこには冷房25度の文字が。
「そうか、そういうことか。記憶から消えていた鰐のお面の少女は夢に出てくる子だったのか」
ひとりつぶやく。しかし、ただの夢ではないだろう。その証拠に、グージーという名の猫についてはうっすらとだが記憶があったのだから。