第62話 水溜り5

文字数 385文字

 いや、戻るも戻らないも、私には正しい記憶があるわけで。
 知らん人が家族を語っていることのほうが問題なんだけれど。
 それを言うべきかどうなのか迷って、少し様子見することにした。
 妄想状態とかなんとか言われて、退院できなくなったら困る。

 その後、私の父を称する人と兄を称する人が見舞いに来た。
 もちろん、どちらも見知らぬ人だ。
 ちなみに父は私が高校2年のときに心筋梗塞で亡くなっている。
 兄弟は妹がいるのみで、当然兄など存在しない。

 とりあえず記憶喪失のフリをして、私の現在置かれている状況を自称お母さんに聞いてみた。

 私がこの病院に運び込まれたのは、面接の日に間違いなかった。
 水溜りにはまりこんだあの場所で倒れている私を、面接先の企業の社員が発見し、救急車を呼んでくれた。
 それから3日後の今日まで、外傷もなく健康状態にも異常がないにもかかわらず意識不明だったらしい。
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