第29話 百物語4

文字数 506文字

 7話、8話、9話……。
 マサルの話は必ずお題とはトンチンカンなものだったが、スグキラバーは毎回キャーキャー騒いでウケているので、これはこれでいい気がしてきた。

 時刻は午前3時を回り、マサル大王の99話め。

「小さいサヤエンドウかと思ってつまんだら、青虫だった。
 力が入りすぎて胴体が……」
「いやあああああ! もう無理! 明日からサヤエンドウ食べられない!」

 相変わらず反応の良いスグキラバー。
 次回やるときも絶対参加してもらおう。
 でも、マサル大王には最後にもう一度だけ釘をさしておかなければなるまい。
 オオトリの100話めを語る前に声をかける。

「マサル大王、画面暗すぎじゃない? 大丈夫、見えてる?」
「平気ですよ」
「そっか。
 演出としてはいい感じで怖いし、ナイスアイデア!
 でも、怪談のルールはもう少し気にしてほしかったな」

 マサル大王のモニターはほぼ真っ暗で、もはや人の形の輪郭しかわからない。
 その人影が、首をかしげるように動く。

「心霊絡みならOKでしたよね?
 全部自分の体験談だからなぁ、問題ないと思うんですけど」

 声はする。
 しかしどんなにモニターに目を凝らしても、暗闇の中には輪郭すら見えない。
〈完〉
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