第44話 2割 2

文字数 696文字

「聞いていた以上にいっぱいいるけど、どうする?」
「え、女と爺さんと足だけじゃないの?」
「うん、10匹以上いそう」
「霊って、数え方は匹なの?」
「ごめん、ゲームのときのクセで」

 さすがに10匹もお願いするのは気が引けたので、当初の予定どおり女、爺、足の3匹だけ払ってもらうことにした。
 お祓い自体は儀式めいたことはなく、なんかフレンドが歩きまわって少していねいなお辞儀をしたくらい。
 それで女も爺も足も、ジワジワ薄くなって見えなくなった。
 それからピザ取ってゲームして、霊のことはすっかり忘れた。

 一週間後くらいかな。
 また霊が出たんだ。
 今度は、首吊り男とボディコン女と昭和初期の子供。
 ゲームでフレンドにあったとき、さっそくその話をしてみた。

「確かに、前オフ会したときにその3匹も居たよ」
「今まで見えなかったのに、見えていた3匹が祓われたら代わりに姿を表したってことか?」
「働きアリの2割は絶対サボるって話、聞いたことない?
 いざというときのために体力を温存しているとか、急な環境変化や不測の事態に備えて別行動しているとかいろいろ説はあるけど」
「あるある。
 企業なんかでも2割はサボリーマンがいる、みたいな話な」
「それと同じだと思う」

 なんだろう、すでにこの世に存在しないものが、不測の事態に備えて多様性を展開しているというのがイマイチ納得できない。
 でも結局、霊のうち3匹だけ見えるようになるという仕様を逆手に取って、無害そうな3匹を厳選することで落ち着いた。

 今、アパートには昭和初期の子供、空飛ぶ着物、首が回る日本人形の霊が出る。
 実害はないしビックリもしないから、ゲームが捗る。
〈完〉
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