第33話 物欲センサー4

文字数 634文字

 プー太郎は囚人にジョブチェンジすることにした。
 さすがに人は殺したくないから、強盗でもしてみようかなー、なんて。
 夜中に包丁を持って、人通りの少ない道で獲物を待つ。
 成功率を考えると、相手はどうしても小柄な女性になっちゃうよね。
 申し訳ないとは思いつつ……。

「金を置いていけ、騒いだら殺す」

 仕事帰りの女性を狙い、電信柱からぬっと包丁を突きつけたんだ。
 彼女、声も出さずに固まってたよ。
 それからバッグから財布を取り出して、無言で差し出すの。
 しっかりこっちの顔を見ながらね。
 財布を受け取ってからあっちへ行けと促すと、そのまま走って逃げた。
 きっとこの後、彼女は警察に通報するだろうね。
 そんで遅くとも明日には御用になるって寸法だ。

 財布の中身はなんと、20万もあった。
 狙ったわけじゃないけど、そういえば給料日だったっけ。
 久しぶりに、うまいもんでも食うかなーなんて。
 塀の中じゃ、好きなもの食えなくなるからね。

 強盗したその足で最寄りのファミレスに行き、頼んだのは一番高いステーキ。
 いつパトカーのサイレンが近づいて来るか耳を澄ませていたけれど、500グラムの肉を食べ終えてもそれらしき気配はなく……。
 その日はそのまま、家に帰って寝ちゃった。

 翌日、目覚めたのは昼過ぎ。
 警察にドアをぶち破られて飛び起きたわけじゃないよ、普通に起きた。
 なんで誰も捕まえに来ないんだろう。
 逃げも隠れもしていないのに。
 まさか昨日の彼女、通報していないとか?
 報復を恐れて?
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