第25話 動機2

文字数 620文字

 話が逸れたが、もうこんな割に合わない生はゴメンなんだ。
 さっさと終わらせてほしい。
 でも自分で死ぬのは怖いし痛そうだし、もし失敗したらより悲惨だろ。
 安楽死でもあれば選択の余地はあるが、残念ながらないものねだりだ。
 何の手違いか知らないが、さっさとエラーを修正してあの日に死んだことになればすべてが丸く収まるんだ。

 だから、このいかにも現実めいた夢から覚める方法を色々試すことにした。
 前述の「まじかよー」って思うような、自分にとってショッキングなアクシデントを試すことにした……痛くない系の方法で。

 会社をクビになってみた。
 次の就職先もまったく決まっていない状態で、仕事に対する意欲を少しずつ、目に見えて落としていく。
 そして例の上司が「そんなに仕事したくないんだったら、今すぐ辞めていいんだよ!」と切り出したタイミングで「はい、今すぐ辞めます」と返した。
 俺は、引き継ぎもせずに有給消化に入ることに成功した。
 でも、計画としては失敗だ。
 現にこうしてまだ生きている。
 本来なら「まじかよー」って思わなきゃならない場面なのに「やったぜ!」って思ってしまったのが敗因だろう。

 参ったな、誰かに殺されそうになるのはかなり難しそうだし、それこそゴルゴ並の殺し屋にでも依頼しないかぎり一瞬であの世に送ってもらえるとは思えない。

 こうなったら、もうアレだ。
 痛いのも苦しいのも嫌な俺に実行できる、最後の手段。
 誰かを殺してみるほかないな。
〈完〉
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