第43話 2割 1

文字数 539文字

 今住んでいるアパート、いわゆる「出る」物件なんだ。
 住み始めてから気づいても、後の祭り。
 前の住人が死んだとか、近くで事故や事件があったとかもないから、不動産屋に落ち度もない。
 だから住み続けるしかないわけ。

 出る霊っていうのも、ベタすぎていちいち言うのも恥ずかしいくらい。
 顔から血が出ている女と、リアルすぎて本物かと思った徘徊老人と、足だけの軍人。
 最初はビビったけど、これといって命を脅かされることはなく、ひと月もすると慣れた。

 そんなとき、ネトゲのフレンドと怪談で盛り上がったんだ。
 オレは自分ちの怪談を話して、「怖くないけど気になるから祓いたい」って冗談交じりに言ったら、そいつ「祓えるよ」って。
 よく怖い話で、霊現象があると親戚のオバサンやら勤め先の上司やらに拝み屋を紹介されるくだりがあるけれど、「そうそう身近に拝み屋いねーよ」って思っていたら居たよ。
 実在するもんなんだな、拝み屋。

 オフ会ついでにお祓いしてもらうって話はすぐに決まった。
 二週間後にやってきたフレンドは、どこにでもいそうな三十代の男だった。
 メガネをかけていて、どちらかというと爽やか系のオタクって感じかな。
 うちに入るなり「うわー」って、驚いたんだか驚いていないんだかわからない声を出した。
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