第66話 古井戸2

文字数 420文字

 気づかれないようにペンチを布団に隠し、家族が寝静まるのを待った。
 うっかりそのまま寝てしまうんじゃないかという心配は必要なかった。
 両親の言葉を思い出すたびに、何度でも体がカッと熱くなって眠るどころじゃなかったから。
 そして夜中の1時を過ぎると、両親もどうやら寝たようだった。
 作戦決行だ。

 わたしはペンチを持って1階へ降り、勝手口から外に出た。
 正面口の扉は立て付けが悪くて音がするから。
 そして一直線に古井戸へ向かい、針金をペンチで切りまくった。
 かなり厳重で、フタするのにだいぶ苦労しただろうなと感じた。
 作戦のあと結果わたしが生きているということがわかった後も、またフタするのに大変な思いをするだろうから、二重の意味でいい気味だ、って。

 全部の針金を切り終えて、手を引っかけないよう気をつけながらベニヤ板を外す。
 ミスって音を立てたくないから、慎重に1枚ずつ。
 合計3枚のベニヤ板でふさがれていた。
 最後の1枚をどけて、作戦終了。
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