第59話 水溜り2

文字数 440文字

 電車の乗り継ぎがうまく行って、確認してみると駅から目的地までの徒歩10分を含めても、約束の時間の5分前に着けそうでホッとする。
 ……のもつかの間。
 豪雨で電車に5分の遅延が発生したというアナウンスが入った。
 普通なら騒ぐほどのことでもないと思っていた。
 でも実際に1分1秒を争う状況で失われる300秒は大きすぎる。
 とはいえ、自分の力でどうにかなる問題でもないし……。

 予定通り? 5分遅れて到着した駅のホームへ飛び降りた私は、全力疾走を開始した。
 徒歩10分は歩いた場合の時間。
 走ればまだ、チャンスはある。
 一瞬、相手先に電話を入れようかとも思ったけれど、それすらももどかしい気持ちになっていた。

 改札口を出ると同時に傘を開き、走る。
 アナウンスが豪雨と言っていたとおり、雨粒が大きく勢いも申し分のない雨量だ。
 すぐに足元がびしょぬれになったけれど、構いやしない。
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