第64話 水溜り7

文字数 502文字

 私はあの事故以降のことについて、3つの仮説を立てることしかできない。

 ①私の記憶違い。
 水溜りで滑って転ぶなどしたショックで記憶が書き換わってしまった。
 記憶喪失ならあり得る話だけれど、都合よく記憶が変わるなんて起こり得るのか。
 そうだとすると、本当の記憶が蘇るのをただ待つほかない。

 ②私は何らかの陰謀に巻き込まれている。
 自称家族たちは、何らかの理由で私の家族になりすましている。
 戸籍や母の友人、妹の勤め先などに当たったけれど、該当する人物はいなかったので、この説が正とすると本当の家族は抹消されたということになってしまう。

 ③私はパラレルワールドに移動した。
 自分の人間関係だけピンポイントに違う平行世界に移動してしまった。
 最も荒唐無稽だけれど、②に比べたら遥かにマシだと思える。

 だから私は③の説を正として、今もこの世界を生きている。
 以前とはまったく別の理由で水溜り恐怖症のまま。
 また水溜りを通り抜ければ元の世界に戻れる可能性もあるけれど、さらにまったく別の世界に行き着く恐れもあるからリスキーすぎて試せず。
 そんなわけで、たとえ長靴をはいていても水溜りに入るのはオススメしない。
〈完〉
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