第40話 実害はない6

文字数 683文字

 発した言葉は「えっ、小っさ……」。
 やっぱりそうだ、この部屋の霊はみんな、サイズ感がおかしい。
 まともなやつはいないのか。
 友人いわく、浴槽の排水口にピッタリはまるサイズの紫色の顔があって、エンドレスで泡を吹いているらしい。
 すごい、もうツッコミどころが多すぎて、どの点でビビったらいいかわからない。

 霊がことごとくイカれたメンバーだとは友人も予想していなかったらしく、怖いという気持ちが薄れた様子。
 正直なところ最初は「やっぱり帰る」って言われるかと思っていたけれど、お泊りは続行になった。
 二人でコンビニのおつまみや缶詰を開け、カンパイ。
 台所から漂ってくる巨人の霊(?)の口臭で、うっすら臭い。
 風呂場のコポコポは完全スルーしてシャワーも済ませ、そろそろ寝ようかとフローリングを歩いていると、友人が「痛っ」と言って自分の足の裏を見ている。
 そういえば固い何かが足に刺さる現象を説明していなかった。
 友人はというと、今までで一番気持ち悪そうな表情で言った。

「これ、爪?」

 そう言われても見えないわたしには何のこっちゃだ。
 詳しく聞いてみると、はがれた足の親指の爪っぽいものらしい。
 はがれた、ってことは血や肉がついていたら嫌だなと思って聞いてみると、ついていないそうなので安心した。

 夜中の2時くらいに寝ることにした。
 友人にはベッドを使ってもらって、わたしはその横の床に冬用の布団を敷くことにした。
 お互いに「おやすみー」と言って寝る体勢に入る。
 体感だけれど、その5分後くらいかな。
 友人の悲鳴で飛び起きて電気をつけた。

「立位体前屈してる! 立位体前屈!」
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