第21話 渦潮マンゴスターチ1

文字数 804文字

 技術の進歩はすばらしい。
 次から次へと新しいテクノロジーが生み出され、一般化し、やがて廃れていく。
 最先端に乗れているときは、たぶん若いんだろうな。
 ワンテンポ遅れて乗るようになると、年取ったなと思う。
 そして完全についていけなくなったとき、最新技術をよく知りもせず「くだらない」と言い出したとき、悲しいけれど老害と呼ばれる存在になってしまうのだろう。

 こうした最新テクノロジーに遅れをとらないよう食らいついているのは、どうやら人間だけではないと最近気づいた。
 結論から言おう、いわゆる幽霊も、最近のデジタル事情に対応し始めている。
 彼らは何百年も前、幽霊画などに取り憑いて耳目を集めた。
 それから呪いの人形なんて形で一世を風靡したのも記憶に新しい。
 そして心霊ブームといえば心霊写真は言うまでもないだろう。
 何年か前から、テレビは心霊動画を取り上げ始めた。
 もっともこれについては……海外のホラー映画のワンシーンをそのまま使っているだけで「オイオイ」と思ったりもしたわけだが。

 今、幽霊たちが新たな自己表現の場として注目しているのが、SNSだ。
 老いも若きもTwitterやらインスタグラムに夢中。
 電車で座ると両サイドの乗客がどちらもツイッターをさかんにスクロールしているなんてザラだ。
 幽霊っていうのは視える人が限られているぶん、視られたがりなんじゃないかというのが個人的な持論だ。
 つまり、これだけ世の中の人が夢中になるSNSに、彼らが参戦してこない理由がない。

 このことに気づいたのは、かつて友人だった奴の身に起きた出来事が発端だ。
 そいつはまぁ、自己顕示欲が強いほうだった。
 なんていうか、聞こえよがしの独り言が多い奴だったんだ。
 あとは、わざとらしい長いためいきをついたり。
 他の誰かが「どうしたんだ?」と声をかけてくれるのを待っているタイプ。
 俗にいう、かまってちゃん……面倒くさい系だな。
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