第59話 急用
文字数 811文字
その日の放課後、スマートフォンの電源を入れると、伸からメッセージが来ていた。
――急用が出来たので、悪いけど、今日は会えなくなった。今夜電話するよ。
有希は、思わずため息をつく。今日は久しぶりに、お気に入りの洋菓子店に行って、季節限定のケーキを買ってから、伸の部屋に行こうと思っていたのだ。
だが、急用では仕方がない。有希は返信する。
――わかったよ。お仕事頑張ってね。電話、待ってます。
がっかりして、真っ直ぐ家に帰ろうかと思ったのだが、思い直して、洋菓子店に行き、自分のぶんと、母へのお土産にケーキを買って帰った。
自分はいつも、伸のことで頭がいっぱいだが、そうしていられるのは、理解ある母のおかげでもある。たまには母にも感謝の気持ちを示さなくては。
あの日以来、伸の母から連絡はないらしく、伸は口には出さないが、とても気にしているようだ。やはり、自分の息子がゲイであるということは、簡単に受け入れられることではないのだろう。
いつものように、一人で夕食を取り、後片づけをしてから、紙にメッセージを書いてテーブルに置く。
「ママへ。冷蔵庫にケーキが入ってるから食べてね。僕からのプレゼントだよ。有希」
美容に気を遣っている母は、夜更けにケーキなど食べないかもしれないが、きっと喜んでくれるだろう。
その後、シャワーを浴びて、パジャマに着替えてベッドに入り、伸のことを考えていると、枕元で、ようやくスマートフォンが着信を告げた。
有希は、スマートフォンを手に取る。
「もしもし、伸くん?」
「あぁ。遅くなってごめん」
「うぅん。大丈夫だよ。今までお仕事だったの?」
だが伸は、思いがけないことを言った。
「いや。さっきまで病院にいたんだ」
「えっ?」
伸の身に、また何かあったのだろうか。一瞬そう思ったのだが、伸は、さらに続ける。
「母が入院してね。たいしたことはないんだけど」
「えっ!?」
有希は、思わずベッドの上で正座をする。
――急用が出来たので、悪いけど、今日は会えなくなった。今夜電話するよ。
有希は、思わずため息をつく。今日は久しぶりに、お気に入りの洋菓子店に行って、季節限定のケーキを買ってから、伸の部屋に行こうと思っていたのだ。
だが、急用では仕方がない。有希は返信する。
――わかったよ。お仕事頑張ってね。電話、待ってます。
がっかりして、真っ直ぐ家に帰ろうかと思ったのだが、思い直して、洋菓子店に行き、自分のぶんと、母へのお土産にケーキを買って帰った。
自分はいつも、伸のことで頭がいっぱいだが、そうしていられるのは、理解ある母のおかげでもある。たまには母にも感謝の気持ちを示さなくては。
あの日以来、伸の母から連絡はないらしく、伸は口には出さないが、とても気にしているようだ。やはり、自分の息子がゲイであるということは、簡単に受け入れられることではないのだろう。
いつものように、一人で夕食を取り、後片づけをしてから、紙にメッセージを書いてテーブルに置く。
「ママへ。冷蔵庫にケーキが入ってるから食べてね。僕からのプレゼントだよ。有希」
美容に気を遣っている母は、夜更けにケーキなど食べないかもしれないが、きっと喜んでくれるだろう。
その後、シャワーを浴びて、パジャマに着替えてベッドに入り、伸のことを考えていると、枕元で、ようやくスマートフォンが着信を告げた。
有希は、スマートフォンを手に取る。
「もしもし、伸くん?」
「あぁ。遅くなってごめん」
「うぅん。大丈夫だよ。今までお仕事だったの?」
だが伸は、思いがけないことを言った。
「いや。さっきまで病院にいたんだ」
「えっ?」
伸の身に、また何かあったのだろうか。一瞬そう思ったのだが、伸は、さらに続ける。
「母が入院してね。たいしたことはないんだけど」
「えっ!?」
有希は、思わずベッドの上で正座をする。