第54話 確認

文字数 867文字

 伸が食事の後片付けをしている間に、有希は、奥の部屋行って母に電話した。
 二人で寿司を食べているところに伸の母がやって来て、もう隠しようがないので、明日にでも話をすることになった。ついては、そのことについて、これから相談するために、今夜は泊まりたいのだ。
 そう言うと、母は渋々ながら許してくれた。
「仕方ないわねぇ。粗相のないようにして、安藤さんのお母さんには誠意を持ってお話するのよ」
「うん。そうするよ」
 やっぱり母は、有希の気持ちをわかってくれる。自分に取っては、世界一の母親だと思う。


 夜になってから、伸が母に電話をかけた結果、翌日、カフェの閉店後に、二人で訪ねて行くことに決まった。
「なんだか緊張して来た」
 ベッドに腰かけて電話する伸の横で、それを聞いていた有希は、電話を切った伸にもたれかかる。伸は、スマートフォンをベッドサイドに置き、有希の肩を抱き寄せながら言った。
「俺のことをどんなに愛しているか、話してくれるんだろ?」
 顔を見ると、伸はにやにやしている。伸が、緊張をほぐしてくれようとしているのだとわかり、有希も笑顔で返す。
「そうだけど、ちゃんとお母さんに話せるように、愛を確認してもいい?」

 伸が、不思議そうな顔をする。
「確認?」
「そう。確認するんだよ。こうやって……」
 有希は、向かい合うように伸の膝にまたがり、キスをする。そのままベッドに押し倒そうとすると、伸が眉根を寄せて、喉の奥でうめいた。
 有希は、あわてて両手の力を緩める。
「伸くん?」
「まだ、肩が少し痛むんだ」
「あっ、ごめん」

 伸は、左手で前髪をかき上げながら言う。
「いいよ」
 伸の、痛みをこらえる顔もセクシーだと思う。気持ちが高ぶり、体が火照って、もう収まりがつかない。
 有希は、伸の膝から下りながら言った。
「じゃあ、痛くないようにしてあげるから、横になって」
「あ……わかった」
 戸惑いの表情を浮かべながらも、伸は素直にベッドに横たわった。有希は、伸のシャツの裾をたくし上げる。
 「確認」は、長く続き、やがてバスルームへと場所を移して、さらに続けられた。
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