第3話 メッセージ
文字数 958文字
頬杖をつき、視線だけは、ぼんやりと黒板に向けたまま、有希は考える。エロい顔って、どんな顔だろう。
ふと浮かぶのは、伸のキスの後の表情だ。ひとしきり舌を絡ませ合った後の濡れた瞳。息が弾み、欲情し、もうキスだけではすまなくなっている顔だ。
いや、欲情しているのは、伸の顔を見つめている自分か。あのときにはもう、体の奥が熱く切なく疼いて、どうしようもなくなっているのだ。
伸と出会うまで、有希は恋をしたことがなかったし、恋に憧れてもいなかった。セックスにも、それほど興味はなかったのだが……。
まさか、自分がこれほど淫乱だとは思わなかった。正直なところ、今はいつも、そのことばかり考えていると言っても過言ではない。
だが、相手が誰でもいいというわけではない。自分が愛し合う相手は、世界中でただ一人の運命の恋人、伸でなくてはならないのだ。
そんなことを考えていたら、伸に会いたくてたまらなくなった。放課後の教室で、有希は、あふれる思いをメッセージアプリに綴って伸に送る。
メッセージは毎日、何通も送る。こういうことが、恋人に疎ましがられる行為だというのも、一般的な情報としては知っている。
だが、そうせずにはいられないし、優しい伸は、メッセージが来るとうれしいと言ってくれる。そして、有希が送ったメッセージよりは、ずいぶん短い返信をくれるのだ。
伸が、有希に気を遣って我慢しているとは思わない。伸は、そういう嘘をつく人ではないと知っているから。
――伸くん、今朝まで一緒だったのに、もう会いたくてたまらない。今日も一日、伸くんのことばかり考えていたよ。
伸くんは今、何をしていますか? 今日はお休みだから、部屋の掃除をしたり、料理をしたりしているのかな。
僕は学校が終わって、これから帰るところです。明日からまた、お仕事がんばってね。
伸くん、大好きだよ♥
「これから会いに行ってもいい?」と書きたいところを、ぐっとこらえて送信ボタンをタップする。さすがに、連日訪ねるのは気が引ける。
返信が来ないかと、しばらくそのまま待っていたが、伸は買い物にでも行っているのか、既読にもならない。
あきらめてスマートフォンを閉じ、顔を上げると、離れた席に座る生野と目が合った。いつの間にか、教室には、ほかに誰もいなくなっている。
ふと浮かぶのは、伸のキスの後の表情だ。ひとしきり舌を絡ませ合った後の濡れた瞳。息が弾み、欲情し、もうキスだけではすまなくなっている顔だ。
いや、欲情しているのは、伸の顔を見つめている自分か。あのときにはもう、体の奥が熱く切なく疼いて、どうしようもなくなっているのだ。
伸と出会うまで、有希は恋をしたことがなかったし、恋に憧れてもいなかった。セックスにも、それほど興味はなかったのだが……。
まさか、自分がこれほど淫乱だとは思わなかった。正直なところ、今はいつも、そのことばかり考えていると言っても過言ではない。
だが、相手が誰でもいいというわけではない。自分が愛し合う相手は、世界中でただ一人の運命の恋人、伸でなくてはならないのだ。
そんなことを考えていたら、伸に会いたくてたまらなくなった。放課後の教室で、有希は、あふれる思いをメッセージアプリに綴って伸に送る。
メッセージは毎日、何通も送る。こういうことが、恋人に疎ましがられる行為だというのも、一般的な情報としては知っている。
だが、そうせずにはいられないし、優しい伸は、メッセージが来るとうれしいと言ってくれる。そして、有希が送ったメッセージよりは、ずいぶん短い返信をくれるのだ。
伸が、有希に気を遣って我慢しているとは思わない。伸は、そういう嘘をつく人ではないと知っているから。
――伸くん、今朝まで一緒だったのに、もう会いたくてたまらない。今日も一日、伸くんのことばかり考えていたよ。
伸くんは今、何をしていますか? 今日はお休みだから、部屋の掃除をしたり、料理をしたりしているのかな。
僕は学校が終わって、これから帰るところです。明日からまた、お仕事がんばってね。
伸くん、大好きだよ♥
「これから会いに行ってもいい?」と書きたいところを、ぐっとこらえて送信ボタンをタップする。さすがに、連日訪ねるのは気が引ける。
返信が来ないかと、しばらくそのまま待っていたが、伸は買い物にでも行っているのか、既読にもならない。
あきらめてスマートフォンを閉じ、顔を上げると、離れた席に座る生野と目が合った。いつの間にか、教室には、ほかに誰もいなくなっている。